『神咒神威神楽 曙之光』閉幕 感想
“これにてわたくしたちの物語、神咒神威神楽は終わりです”
グランドフィナーレ。
益荒男たちによる、魂を謳った冒険譚もこれにて終了。
希望に満ちた朝日の訪れに拍手!!
“咲耶の手紙”という形で語られてきた、東征譚と新世界の夜明け。
オールノンフィクションなのだが、受け取り手が信じてくれるかどうか、咲耶としては若干不安(そりゃそうだ)。
ここまでありのままを包み隠さず話してきたが、最後に一点だけ、咲耶は送り主に秘め事を。
それは「新世界の法則」。
大欲界天狗道が終わり、今の世を包むルールが何なのか。
決して意地悪で明かさないわけじゃなく、咲耶もまた「座に関わった者の責任」を受け継いでいるから。
“おまえたちはそんなこと知らなくてよいから、ただ日々の刹那を精一杯駆け抜けろ”
座に在る者の責務について、誰よりも重く受け止めていたあの刹那ならばきっとこう言うだろうと、咲耶。
この一文だけで、ブログ主含む多くのDiesファンは救われたのでは。
しかし驚くべきなのはここから。
咲耶の意味深な文面が始まる。
“あなたの周りにも、似たようなことを仰りそうな方がおられるのではないでしょうか”
“近々、ご友人の結婚式がお有りだと伺いました。なんでも花嫁は、あなたの再従姉にあたるそうで。きっとその方も、同意見のような気がします”
とは言いつつも、ここまで付き合ってくれた相手への礼もかねてか、咲耶は新世界がこんなルールだったらと、ひとつの願望を述べる。
それは旧神たちの法の合作。
理想であった“覇道神の共存”は黄昏以外にできる業ではないため、それの模倣。
具体的に言うと、死後の魂の行きつく先を選ばせる。
二元論・堕天奈落・悲想天・修羅道・回帰・輪廻・大紅蓮地獄。
バリエーションに富んだこれらの居場所があれば、誰もはぐれ者など出ないだろうという、希望に満ちた世界。
『化外』など二度と生ませないという気概すら感じる。
他者を受け入れる、絆の覇道。
100余年を生きた咲耶。
刑士郎と死別して以降、様々な艱難辛苦があったことは明らか。
それでも、次代を育み、見守ってこれたのは『人』としての強さからか。
そしてだからこそ、もうすぐ来るであろうお迎えに、悲観する気持ちは微塵もない。
むしろ長く待たせてしまった約束を果たせることに、胸を膨らませる。
手紙は終わる。
締めくくりは感謝の言葉。
現実のあなたに出会えて良かったと、最後の最後に気持ちのいいネタバラシ。
“奥羽では、お世話になりましたね”
“綾瀬、香純様”
——そして。
浄土へ旅立った咲耶。
そこでは、みんなが待っていた。
待ちくたびれたと愚痴る紫織に、まあまあと間に立つ夜行。
宗「刑士郎さんは早かったですけどね」
水「おまえ、さっさと死にすぎだぞ。なんと甲斐性のない男だ」
軽口、冗談、悪態......過日と変わらない光景がそこに。
咲耶もまた昔日の時分に還る。
咲「凶月咲耶、遅れましたがようやっと参りました」
約束通り、そこには満開の桜。
お調子ノリの覇吐、一喝する竜胆。
何もかもが在りし日のままで、咲耶も笑顔があふれる。
早世したことを反省している刑士郎に対しては、なんと呼び方が“兄様”から下の名前へ!!
なんかこっちまで照れちゃうのと、刑士郎がラブコメやってる気色悪さとが相まって、変な感じ(笑)。
いろいろなものを失いながらも、成長を遂げた益荒男たち。
総大将の乾杯を以て、彼らの冒険譚は終幕する——。
人物雑感
坂上覇吐
その名の通り、覇を吐いた新世界の益荒男。
前作の蓮がやれやれ系だったことを踏まえてか、こっちはヘラヘラしたスケベキャラに(まあ2人とも根っこは泥臭いほどの熱血キャラなんだけど)。
ある種この物語の元凶でもあり、実は影のある奴だったりもする。
暗い世界観がベースな今作で、明るいノリをやってくれた覇吐には感謝しかない。
性欲界紳士道という概念こそ、第七天を獲るべきだったと思わなくもない。
久雅竜胆鈴鹿
我らが総大将。
性別を間違えて生まれてきた人。
見た目に違わぬ凛々しさを備えており、爪牙の中で彼女を嫌いな人はいないのでは?
また、設定が複雑なこともあり、そのせいで中盤こんがらかった人も多いはず。本人にしてみても、真実を知る前も、知った後も精神的にキツかったはず。良き伴侶と仲間ができて、本当によかった。
覇吐へのデレが唐突だった気がしないでもないが、まぁそこは生まれの宿命か。デレっぷりの破壊力がすごかったのでよしとしよう(恍惚)。
凶月刑士郎
ベイの成れの果て。
個別ルートでの雄姿はおそらく最上かも。
“人である”ということが、正田作品においていかに重要かよくよく教えられました。
最終的にはベイとは無関係なんだけど、にしてもやっぱりラブコメが似合わねえ男だわ(笑)。
凶月咲耶
ヤンデレの成れの果て。
男の後ろに立つ、もしかしたらいちばん時代観に則ったキャラだったかも。
まぁ実態はやはりとんでもないモノであったわけで......赤子がいなかったら本当どうなっていたか。
物語の語り手という大役、お疲れ様でした。
壬生宗次郎
THE・剣神。
天狗道のテンプレみたいな人で、かなりわかりやすいキャラでした。
独りよがりだった分成長ぶりも分かりやすく、彼が絆を尊ぶようになったところは感涙もの。
紫織以外付き合える奴がいないので、彼女の存在は非常に大きい。
太極含め厨二心にぶっささりなので、彼のファンは多そう。
玖錠紫織
歴代作品でも一・二を争うめんどくさい女。
キャラのつかみにくさは、作者ですら悩ませるほど。
ただ結局のところ、器用だけど中身は不器用というありふれた女性。要するに素敵ってこと。
宗次郎もだが、修羅道でも二元論でもやってけそうなメンタルとスペック。
平和な第七天でも殺りあってんだから、もうダメだこいつら(笑)。
摩多羅夜行
う◯こ。
とはいえ最終的には閻魔という立派な称号を得れた、第七天の総責任者。
超然とした雰囲気を纏ってるくせに「貪・瞋・癡」というネタまでできる、エンターテイナーの鏡。
座の解体について思索を巡らせているため、シリーズのキーパーソンになるかも。
御門龍水
変態......なんだけど、コンシューマ化のおかげでだいぶ常識人っぽくなった。
純正な天狗道の住人ではあるものの、異端な人たちが近くにいたからか、他者との絆を感じさせるシーンが多かった。
特に母との別れはみてるこっちも落涙モノ。
個人的に中の人の演技がぶっ刺さりで、何度も心うたれました。
日々の刹那を精一杯駆け抜ける彼ら→『神咒神威神楽 曙之光』曙之光 感想・上 - ゆらりゆらりとゆらゆらと