ゆらりゆらりとゆらゆらと

あたまの悪い男が、起こったことを忘れないためのボケ防止日記

『神咒神威神楽 曙之光』神咒神威神楽編 感想・下

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“いざ尋常に——

“勝負しようかァッ!”

“勝負しようかァッ!”

 

 

ラスボス戦クライマックス。

多くのびっくり展開が続いた本作だが、ラストは王道ド直球。

我々爪牙が求めた決着がここに。 

 

 

 

 

波旬と覇吐のタイマンに持ち込むため、まずは歴代神座戦。

とっくに亡き彼らであるがその残影たちですら、波旬だけは許してはならぬと訴えかける。

波旬がまず投げてきたのは、第三天・明けの明星。

“アクセス——我が罪”

ケララー ケマドー ヴァタヴォー ハマイム ベキルボー ヴェハシェメン ベアツモタヴ”

“されば六足六節六羽の眷属 海の砂より多く天の星すら暴食する悪なる虫ども 汝が王たる我が呼びかけに応じ此処に集え”

“そして全ての血と虐の許に 神の名までも我が思いのままとならん 喰らい 貪り 埋め尽くせ”

“来たれゴグマゴォオグッ!”

 

放たれたのは巨大な“罪”の一撃......ではなく大量の蝗の群れ(ぎぃゃやああぁぁぁぁぁぁ((((;゚Д゚)) 。

それも発生源はなんと紫織の体内(_(:3」z)_)

対象を内側から食いつぶす、浄化の裁き。

術者の性格が反映されているのか、徹底的に遊びがなく、“可能性”の入る隙がない。紫織に対してこれ以上ない致命打。

 

続く攻撃も手心なし。

 

“アルファ オメガ エロイ エロエ エロイム ザバホット エリオン サディ……汝が御名によって 我は稲妻となり天から墜落するサタンを見る”

“汝こそが我らに そして汝の足下 ありとあらゆる敵を叩き潰す力を与え給えらんかし いかなるものも 我を傷つけること能わず”

“おおグロオリア 永遠の門を開けよ”

“永遠の王とは誰か 全能の神 神は栄光の王である”

“ネツィヴ・メラー”

 

パラロス最強の術式発動。

その効果は“あらゆるものを断罪し、塩の柱とする”

地の文からして防御不可。「浄化の光」というすさまじく強そうな厨二ワード。

益荒男全員が塩の結晶となりつつある中、仲間たちを守るためあの宗次郎が前に出る。

負けじと斬撃で光を斬っていくも、明らかに劣勢。手に持つ剣もあれよあれよと消滅。

ガシガシ削られていく2人を見て、焦る覇吐ら。

こっちもハラハラしてきた(; ・`д・´)。

だが、そんな心配する声に応える力強い返答が!!

 

紫「私らはただ、竜胆さんの示す道を信じてるから」

宗「僕らが、その血路を開きましょう!」

 

仲間のために身命を賭す両者。自分本位だった彼らの成長に、胸が熱くなるぜ......!

そうして、2人の太極が過去最高潮に躍動。

互いが互いを守るべく放たれた奥義が、期せずして混ざり合う。

無尽の刃が蝗を撫で斬り、無限の殴打が塩の光を貫く。

“御言の伊吹大宝楼閣”

ブチ抜かれた第三天は退場。

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消えゆくときまで大上段なのはご愛嬌。

と同時に、全力を出し切った宗次郎と紫織も舞台から退場していく。

最初から最後まで「一番槍」という大役を務めてお見事でした!

 

 

休む間もなく波旬は次を。

覇吐らを襲う、戦争の体現者。

“怒りの日 終末の時 天地万物は灰燼と化し ダビデとシビラの予言の如く 砕け散る”

“たとえどれほどの戦慄が待ち受けようとも審判者が来たり 厳しく糾され 一つ余さず燃え去り消える”

“我が総軍に響き渡れ 開戦の号砲よ 皆すべからく玉座の下に集うべし”

“彼の日 涙と罪の裁きを 卿ら灰より蘇らん されば天主よそのとき彼らを許し給え”

“慈悲深き者よ 今永遠の死を与える エイメン”

“混沌より溢れよ——怒りの日”

Du-sollst——Dies irae

 

聖槍十三騎士団出陣。

首領に隷属する何人かの見知った顔々。

彼らから受けた恩義に報いるべく、この鮮烈な輝きを曇らせないと益荒男たちは誓う。

黄金の残滓から放たれるは“運命の神槍”

前作でも散々猛威を振るったこの槍、夜行を庇うように前に出た龍水にクリーンヒット!

その光景に、あの夜行が動転。ちょっと前までだったら考えられなかった変わりよう。宗次郎といい夜行といい、このグランドルートで成長っぷりがよくわかるぜ(胸熱)。

......そして変わったのは夜行だけじゃない。

彼の取り乱しぶりを目の当たりにし、龍水が口にするのは、

水「は、あはは、なんですか......その顔は」

 「嬉しい......でも、そんな夜行様......嫌いです

 「私ごときに、気など割かないでくださいませ。夜行様は、無敵の殿御なのでしょう?」

 「ならば私も、それに相応しくありますから......」

 

 「お願い、信じて......」

 

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好きな相手に「嫌い」と言える。かつての龍水には絶対できなかったこと。

思いが「妄信」ではなく「愛情」に変わったことがよくわかる。

奥羽で太陽から送られた金言が身を結びましたね。

 

こんな発破をかけられて、燃えない男がどこにいようか。

女の願いなど遥かにぶっちぎってやらんと、新生した“夜摩閻羅天”が唸りを上げる。

 

それに対抗するかのごとく、場に渦巻くは回帰の念。 

“未知の結末を見る”

Acta est fabula

“Et arma et verba vulnerant Et arma”

“Fortuna amicos conciliat inopia amicos probat Exempla”

“Levis est fortuna id cito reposcit quod dedit”

“Spem metus sequitur”

“Disce libens!”

 

マリィへの愛を謳いながら、永劫回帰が流れ出る。

残滓が及ぼす効果は、成長の阻害。 

夜行の太極を封じにかかる。

厄介極まりない上に、暗黒天体創造も発現。

術理においては歴代最高の第四天。

しかし相対する夜行も“咒皇”の名を冠する希代の術者。

暗黒天体へ苦しみながらも応戦。内側から解剖せんと必死。

らしくない苦悶の声に、覇吐と龍水が心配するのもムリないぜ......。

 

夜「馬鹿め、要らぬ心配だ......私を誰だと思っている!」

 「摩多羅夜行は、死を裁く者......死にたがりの神格なぞ、取るに足りんわァッ!」

 

安定の大言壮語。しかしこれでこそ夜行様。

生まれ変わった夜摩閻羅天の色は「殺す」から「死後を裁く」に変貌している。

そのため水銀のすべてを把握した夜行がとった行動は、暗黒天体を水銀ごと黄昏の方へ押し返す。

結果、残滓といえど、望みが果たされた形で水銀は消滅。

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夜「さあ龍水、おまえも魅せろ。でなくば二度と抱いてやらんぞ!」

消えゆく刹那、今度はお返しに嫁へ激励。

クライマックスだからってどいつもこいつもラブラブっぷりが留まることを知らねえ!!

 

龍水は自身を貫く槍に触れ、亡き母に語りかける。

母の現役時代を垣間見て、その様がどこまでも美しく鮮烈であったことを敬慕。

なおのこと、塵のいいように扱われることなど断じて許せず。波旬の討滅を、黄金の輝きに約束する。

——そうして槍は弾けとぶ。黄金卿は、部下を引き連れ去っていく。

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武威ではなく、愛を以て修羅を制覇。

けどもしかしたらこれこそ正しい黄金の攻略法なのかもしれない。彼もまた凄絶に愛を謳った人だったから。

龍水も後を追うように退場。

 

 

波旬を中心とした中台八葉院から、都合三つの神座が消滅。

通常ならば大打撃なのだが、波旬相手では逆効果。

周囲で鬱陶しかったモノが消えてゆくことで、心地よさからか爽快に笑う。

前述したとおり、一人になるにつれ力を増していくのが波旬の特性。よって覇吐らが座に乗り込んできたときよりも、その武威は強大になっている。

波「その調子で、塵同士喰らい合えよ。他におまえたちが行く場所なんて、俺の天狗道の何処にもない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刑「違う。何処へだって行けるはずだ」

 

 「もう俺たちは、何者にだって縛られちゃいねえ。そうだろう?」

 

 

咲「はい、他ならぬ兄様が道を示してくれましたから」

 

 「わたくしたちは、夜明けを目指すことが出来るのです」

 

 

「俺の身体」と嘯いていた天狗道から響き渡る、声。 

解脱し、人として生きていく道を選んだ両者の宣誓に、第一天と第二天が呼応し退場。

そして影響はそれだけに留まらず。

生まれてくる赤子の光が、最強無敵の第六天に亀裂を刻む!!

 

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これが波旬生涯初めての傷。

初めて感じる「痛み」という感覚......小さな疑問から、やがて大きな恐怖に変わっていく。

波「俺の、身体が、おお、おお、おおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉォォ!」

 「俺の!俺の天狗道(カラダ)に何をしやがったてめええァッ」

 

ここまで終始余裕をかましてきた波旬が初めて狼狽。

ようやく勝機が見えてきた!!

すかさず伊邪那美へと成った竜胆が前に出る。

叫ぶのは絆の力。

それを以っておまえを倒すと。

対して意味深な口ぶりで返す波旬。邪神が次に投げてきたものは——在りし日の刹那。

さらについでのように黄昏の君まで放ってくる。

一見攻撃性能を感じさせない黄昏だが、マリィの魂は元々ギロチンに繋がれていた。なのでここでも顕現する巨大なギロチン。

必殺性の高い刃が覇吐と竜胆を襲う。

......が、2人が気にするのはその威力などではなく

 

竜「下種がァッ!」

 「どこまで彼らを穢せば気がすむ!抱きしめるという意味すら知らない貴様ごときが......」

 「この黄昏を、侮辱するなど私が絶対に許さない!」

 

マリィの真実を欠片も案じていない波旬へ激昂。

咆哮を以てして刹那・黄昏を退陣させる。

その散り際は、悲しさを感じさせる笑顔で......。

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竜「泣かないでくれ。御身は真実、後に続く者たちへの道標(しるべ)となった」

 「黄昏の光は、必ず朝日へと受け継ぐよ。ここに約束させてくれ」

 

尊敬していた黄昏へ哀悼の意を送り......後を覇吐に任せ、竜胆もこの場を去る。

 

 

 

すべての神座と益荒男が失せる。

残ったのは、ある意味始まりの2人。

雌雄決する大一番なのだが——肝心の波旬のテンションは甚だ低い。

覇吐へ繋げるために身を粉にした益荒男たち、その一連のやりとりが全て茶番としか映らない。

誰かと笑い、励まし、奮起する。それらが総じて理解不能

波旬が自分以外についてどう思っているか、改めてよくわかるシーン。

波「結局のところ他人だろう。そいつが何をして、何を言っても、己と何の関わりがある?なぜ他人の言動に影を受ける?」 

 「俺にあるのは、ただそれが不快だということだけだ。ああ、本当はそのココロすら煩わしい」

 「そうだ。俺が俺を何より尊び、優先し、俺という世界を統べる王であること。俺の大事さに比べれば、他など目に入らない」

どこまでも徹底して揺るがない唯我独尊の思想。

さすがは渇望だけで刹那たちを蹂躙しただけのことはある。

本当にこいつは生まれてくるべきじゃなかったのかもな......。

 

この独特な思想は、第五天下では当然浮いていた。

人との繋がりが当たり前にある世界、そんな輪の中に自分も含まれているのが気色悪く、ゆえに至った答えは滅尽滅相。

そのスイッチを押すキッカケになったのは......眼前にいる畸形脳腫。

芽生えたもう一つの渇望『畸形脳腫の排除』

「おまえさえいなければ」という他人を区別しないはずの波旬が、唯一特別視して望んだ願望。本来なら持つはずがなかった気持ち。波旬本人もそれを認めており、怒りはより一層。

したがって、『滅尽滅相』と『奇形脳腫の排除』は絶対のもの。それを成せた時こそ、初めて生を感じられると零す。

 

それら胸の内を聞き届け、覇吐もまた本音を明かす。

想いの原点は羨望と恐怖。

自分と違って五体健常な兄弟、たったそれだけのことがどうしても羨ましかった。

そして塵のような存在たる己は、いつか消される運命にあるとひどく嘆いていた。

——しかしそんな負の感情たちとも、今日でオサラバ。

自身へ光を与えてくれる大切な人・共に道を歩いてくれる同胞を得て、覇吐は新生した。

覇「おまえは哀れな奴だ、兄弟。俺がおまえじゃなくて心底良かった」

羨ましいと嘆くだけだった過去の己と決別。 

 

 

お互いすべてをさらけ出した。

最初から最後まで相容れない主義主張。

波旬としてはそれは当たり前のことで、覇吐としてはどこかやる瀬なくて……。

 

唯我曼荼羅には、波旬のみ。

かつて刹那たちを軒並み退けた最強が帰ってきた。

——しかし波旬自身が言っていた「おまえさえいなければ」という、大嫌いな他者を意識しまくった思い。本来持つはずがなかった望外の渇望。

対象たる畸形脳腫=覇吐を前にしたとき、波旬の太極は常態となり『並の覇道神』という型に嵌る。

誰にも崩せなかった第六天、それを沈められるたったひとつの道筋。

 

波「さあ、それでは終わらせようか」

覇「せめて決着といえよ、風情がないぜ」

 

波旬にとっては単なる通過点。

来るべき時が来たに過ぎず。

充溢する神威。

しかしその実、自身が弱体化していることに気付かず。

ただ愉悦に溺れ、もはや覇吐が何なのかという認識すら曖昧に。

そんな哀れな兄弟へ、長きに続いた引導を渡すべく、無敵の主人公は最後の大名乗り——!

 

覇「だったら教えてやるぜ、俺の名を——

 

 坂上覇吐——覇を吐く新世界の益荒男だ!」

 

 「俺こそてめえの歪みで、化外で、救いの光になると知れッ!」

 

 

 

————

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“阿謨伽尾盧左曩 摩訶母捺囉摩抳 鉢納摩 人嚩攞 鉢囉韈哆野吽”

“阿謨伽尾盧左曩 摩訶母捺囉摩抳 鉢納摩 人嚩攞 鉢囉韈哆野吽”

“地・水・火・風・空に遍在する金剛界尊よ”

“地・水・火・風・空に遍在する金剛界尊よ”

“今ぞ遍く光に滅相し奉る!”

“今ぞ遍く光に帰依し奉る!”

“天地玄妙神辺変通力離——

“天地玄妙神辺変通力治——

 

“卍曼荼羅——無量大数!”

“曙光曼荼羅——八百万!”

 

 

紡がれる光明のマントラ。 

共に光を仰ぎながら、祈りの形は正反対。

波旬は全てを滅する破壊の光に対し、覇吐は原典通りの救いの加治。

ぶつかる無量大数と八百万——決定的なのは、凶月兄妹がつけた傷。

そこから畸形曼荼羅に坐す“彼”が乖離。

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触覚である覇吐と融合することで、ようやく外に出ることが出来た。

及ぼす効果は覇吐の力の向上だけに留まらず。

波旬を最強たらしめる要因の一つ、天眼。畸形脳腫由来だったその眼が閉じる。

全ての因果が収束。全霊の十握剣を以て、波旬を断ち切る。

 

覇「逝けよ兄弟、おまえが望んでいた場所に」

 「そこの寂しさに気付けたなら、また会おうや」

 

寂寥感を滲ませたセリフ。

宇宙でただ一人、覇吐にしか言えない言葉。

そんな別れの挨拶にも、波旬は変わらず無感動。

しかし死の先こそが望んだ場所だという意見は認め、今度こそ俺に関わるなと気持ちの込もった悪態を。

憎々しい笑顔とともに、世界を終焉まで追い詰めた邪神は何も変わることなく消滅していく——。

 

 

 

覇吐はすぐさま竜胆と合流。

ここでの2人のラブラブ具合がすごい。

特に竜胆。そのゾッコンっぷりは覇吐以上では?と思わせるほど。 

 

空白となった神座。

システムの是非を問いている時間はなく、2人は“座に関わった者の責任”を果たすことに。

新たな理、それは「誰も泣くことがない太極(ソラ)」

化外と呼ばれる者がいなくなるように。波旬や黄昏、夜都賀波岐のような悲劇を二度と起こさないように。

七つ目の空が始まる——。 

 

 

 

人物雑感

波旬

14歳神が生み出した、空前絶後の大モンスター。

実力もさることながら、その口の悪さも歴代最強。

結果的にネタキャラとしても人気を博してしまった。ほんとに無敵だなこいつ。

同情する点はところどころあれど、それをはるか上回る下種っぷり。敵としてこれ以上ない適正キャラでした。

『PANTHEON』でまさかの味方キャラとして発表されたときは、いよいよ正田も頭おかしくなったかと......。

 

 

 

閉幕『神咒神威神楽 曙之光』閉幕 感想 - ゆらりゆらりとゆらゆらと

 

 

出典元:www.light.gr.jp

 

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