ゆらりゆらりとゆらゆらと

あたまの悪い男が、起こったことを忘れないためのボケ防止日記

「Dies irae ~Amantes amentes~」ChapterⅩ 感想Ⅰ

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“これが怒りの日の前哨戦だ。さあ、存分に乱れようか”

 

 

謀反組vs大隊長で構成されている10章前半。

そのあまりにも熱い展開に、主人公が完全に息をしなくなる!!

 

 

 

 

イザークにより開かれた城の門。

玲愛以外のメンツはのきなみ蠱毒の闘技場へ。

待っているのはもちろん黒のアイツ…。

最初からクライマックスじゃねえか!!

黒騎士のテーマ「Einherjar Nigredo」が絶望感を煽りまくるが、なんとあのルサルカが自ら前に!

いつもの余裕を持った詠唱ではなく、厳かに謳いあげるその姿は、保身と我欲に満ちたこれまでとは違うことが明らか。

章が始まってさっそく魅せてくれるぜ......(興奮)。

 

 

闘技場を抜けるリザ&トリファ。

城の中に入ることで、あらためてリザは黄金錬成の実態を悟る。

リ「情けない......私の目は六十年も閉じていたのね。いや、それとも最初からついてさえいなかったのか」

 「あの二人に、いったい何を期待していたというのよ」

亡くした子供たちを拾い上げようとしていたことが、実際は修羅の地獄に導くものだった。

悪魔2人に希ってしまったことを嘆く、リザの自嘲が痛ましい。

だが、そんなリザ、そしてトリファが共に反逆を宣言し、それぞれの子供たちの魂を“善き場所”に送ると決意した。そのなんと凛々しいことか。

マリィルートでの夫婦喧嘩が嘘みたいだ。

城を進む中、何の気なしに尋ねるトリファ。

イザークの父親は誰?”

その答えを一番聞きたくない鉄の処女が、容赦なく業火をぶちかます

 

 

現世組が厚い歓迎を受けている一方で、放置プレイをかまされている主人公。主人公なのに...。

城の法則を饒舌に説明するマリィ。やはりその演技には違和感を覚えてしまう。普通の女の子やんけ。

城に負けないよう、想いを強く持ってほしいと、蓮にアドバイス

蓮が胸に抱く想い、それは言うに及ばず“時間が止まればいい”というもの。

創造のフラグが建ちましたね。

 

 

難敵を前にするルサルカは、回想する。

黎明の日を迎えた直後の、遺産局へ戻った際の同僚との会話を——。

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戦争という非日常が、研究機関たる遺産局をも呑み込もうとする。

その迫る現実を前に、彼は語る。

 

ロ「遺産は在りし日の輝きを内包したまま止まっている。それがいい」

 「彼らは永遠だ。俺は永遠に憧れる刹那でいたい」

 

永遠を好むも、自らは永遠になろうとは思わない。その確立した強い心。

なるほど、蓮のルーツも納得だ。

彼は続ける。

ロ「俺は幻想になりたくないが、時の止まった不変は好きだよ」

この言葉が、数百年生きてきたビッチババアにクリーンヒット。

今なお、魔女の記憶にこびりついている。

 

 

そして現状、マキナという絶対の格上を相手取るルサルカ。

お得意の影縛りの創造も、最初から死んで(止まって)いる男には通じず。

地力の差が違いすぎるのだが、それでもルサルカは勝負を捨てない。

エイヴィカイトではなく、告解師謹製の魔術を展開。これぞ魔女本来の力。

自らの歩みの遅さを認め、だからこそ皆止めてやるんだと絶叫。

“永遠に生きる幻想になりたい”。かつて取りこぼしてしまった、あの想い人の憧れそのものになりたいんだと、ルサルカが持つ純情に思わずドキっとさせられる。

気付けば全力でルサルカを応援している自分がいる。

...いやこの瞬間はきっと全ユーザーが俺と同じ気持ちだったにちがいない。

やれ......やっちまえ!ルサルカ!!おまえのその純な祈りで、自殺願望に塗れたホモなんてぶっとば

マ「くだらん」

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マ「置いていかれるはいつの世も、死ぬべきときに死ねぬ者だ」

拳たった一振りで、勝負は決着。

死んだ者には追いつけないと、死を奪われた男から一言。

マキナほど説得力のある奴はいない。

保身第一主義のルサルカらしからぬこの一連の裏切り行為。マキナは自滅衝動と評す。

終われることを羨みながら、幕引きの拳を振り下ろす。

 

 

場面は、エレオノーレに捕捉されたトリファたちへ。

先ほどまでのルサルカの悲しい退場から一転、急に流れる赤騎士のテーマ「Einherijar Rubedo」が、しょぼくれたテンションを一気に引き戻す。

ホントにこの第10章は忙しすぎて、頭と気持ちが追いつかねえぜ!!(歓喜)

黄金に絶対の忠誠を誓っているエレオノーレは、当然反逆者たちを許さない。

特に相対する2人はエレオノーレにとっては地雷そのもの。

黄金の近衛として、まずトリファから“聖餐杯”を剥奪。

器から抜けたトリファの魂はアルフヘイムへ。

召喚されたカインも、一瞬で滅却。櫻井一族マジで出番なし。

残ったのは、女2人。ドイツ女子同盟のころより競い合ってきた因縁同士。

「女の戦場に立ったことないクセに、一丁前に嫉妬なんかしてんじゃねえ!」とリザ。

「黄金の恵みを望んだクセに、実態が分かったら反抗するなんてこの恥知らずが!」とエレオノーレ。

2人とも違う点で論争してるのがなんだか面白い。

というかリザの意見に、エレオノーレがそれっぽい理屈を並べてまともに返してないんだよな。やはり姐さんこそが最強の萌えキャラ。

 

召喚された銃撃隊がリザを狙う。

そもそも勝敗なんて最初から決まってる。誰の目にも明らか。

それでも、過去に切り捨ててしまった我が子に想いを馳せ、エレオノーレを見据える。

リ「結局私が、私自身が、あの子を父親と同じにしたのよ。怪物を産んだんじゃない。怪物にしてしまったのよ」

 「だから、ねえエレオノーレ、私はあの子達を救いたいと願う」

エ「貴様の論理は塵のそれだ。重荷ゆえに捨てた事実を棚上げし、今更になって母親面か。私は女ではないかもしれんが、貴様が腐っていることだけはよく分かる」

そうして並べられた銃口から一斉掃射。

エレオノーレの言う通り、リザの行いはあまりに身勝手。

自分の都合で子供を捨て、今また自分の都合で子供の下へいこうとする。

どこまでも偽善者。そう、エレオノーレの言っていることは間違ってない......間違ってないのだが...。

それでも、銃火を浴びながらも前に進むリザさんを見ていると、理屈だけで片付けてはいけないのだと気付かされる。

 

リ「逃げないでよ」

 

銃弾の嵐の中を突き進むリザの一言。

圧倒され後ずさりしかけていたエレオノーレは、この言葉に激昂。

思わずパンツァー隊を呼び出し、斉射。

降り注ぐ砲弾の雨。

リザの心にあるのは一つ「母親になりたい」

そのために、共に青春を駆け抜けた目の前の馬鹿娘へ、とっておきの一発を——。

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絶命必至の砲撃を、意志の力で耐え抜き、かました渾身の一発。

この章だけで、いったい何度こちらの胸を震わせてくれるのか。

本音をぶつけてきたリザに対し、本音を晒すことがなかったエレオノーレ。

リ「私のことが嫌いなら、ちゃんと嫌いな理由に真っ直ぐでいなさいよ」

 「好きな男を取られたのが悔しい。要はそれだけなんでしょう?」

本当に要はそれだけなんだけど...。それを認めれるにはあと6000年はかかるんよ。そこが姐さんの可愛いところなんよ...。

 

エレオノーレの胸へ崩れ落ちるリザ。身体もついに限界。

言いたい放題言わせた分、姐さんもここでようやく反論。

だがその言葉にいつもの険はなく、リザがみせた執念に敬意を表す。

出会ってから一度もしなかった“女の喧嘩”。

何十年か越しに果たされたその喧嘩を経て、リザはどこか満足した様子で逝く。

 

リ「ああ、ごめんなさい。やっと抱いてあげられるわね、イザーク

 「私がいってあげるから、どうか玲愛を......」

 

母が溶けたことを感知するイザーク

その精神は、何も与えられなかったゆえ何も感じない......はずだったのだが、形容しがたい何かがその胸に。

リザの死に慟哭する玲愛が原因と推測し、この生じたエラーを取り除こうと動き出す。

 

 

そうしてついに地獄巡りの順番が玲愛にまわってくる。

落とされた場所は、親に愛された子供たちが逝き着く場所“アルフヘイム”。

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お出迎えしてくれたのは、トリファが取りこぼし、取り戻そうとしていた、10人の花たち。

そしてここの番人シュライバー。

風景はかつてトリファが営んでいた教会。

ここで昔何があったのか、神父がどうなったか、そして「生贄なのだからお前もこの子らのように愛されながら死んでいけ」とシュライバーの胸糞なご高説が止まらない。

耐えきれなくなった玲愛は、塵となって掻き消えていく。

 

花畑に残ったのはシュライバーと、本当の身体を取り戻したヴァレリアン・トリファ。

シ「ああ、金メッキの剥げた君のほうが好感持てるよ、クリストフ。正直、ハイドリヒ卿を僭称している聖餐杯は八つ裂きにしてやりたかった」

お互い鬼門ゆえに、これまで絡みが少なかった両者。

黄金の忠犬であるシュライバーは、やっぱりトリファの立場を気に入ってなかったんだな。

トリファの過去の行いやその歪な精神性を指して“屑”と断言するシュライバー。......否定はできないけれど、でもお前が言うなよ。

そのまま気兼ねなく、あっさりと心臓を一突き。ゾルディック家か。

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ゲームセット。

知略を重ね、不抜の精神を持っている神父らしくないあっけない終わり。

シュライバーも腑に落ちない。

黒円卓随一の諦めの悪さを持つこの神父が、今何を思っているのか。ニヤニヤしながら伺うシュライバー。

これが常に飄々としていたシュライバーの最期であった。

 

流れ始める専用BGM「Lohengrin」。

神父の大逆転劇開始の合図。

身体を取り戻したことにより、サイコメトリー能力も復活。

精神を同調させ、さっそくイジメが始まる。

過去のトラウマをほじくり返し、父と母の行いを思い出させる。

さらに、このアルフヘイムはあくまで逃避先であり、シュライバー本来の居場所ではないことも看破。

ト「あなたは彼らと一緒ではない。なぜなら——

 「あなたは、誰にも愛されていない」

  「愛されてなど、いないんだ!」

シュライバーが最も認めたくなかった事実を突きつける。

この言葉からアンナ化が始まる。

自分は愛されていたんだと、神父の言葉を必死に否定するその姿は何よりももの悲しく、こっちも辛くなってくる。

しかし、怒りのハイパーモードに突入している神父は止まらない。

父親、母親からは愛されていなかった。

それもそのはず。

なぜならシュライバー本人もまた、2人を愛してなどいなかったから。

愛というものを知らないから。

叩きつけられるこれらの言葉を前に、シュライバーいよいよ限界。

シ「おま、え......」

 「自死、衝動、か......ハイドリヒ卿の、英雄(エインフェリア)になれない劣等......貧弱な、魂の限界点が、そこだったという、だけだろう」

 「図に、乗るな。勘違いをするなよ間抜け......何か自分が、高みに達したとでも思っているなら、それは錯覚、錯覚なんだ」

悪あがきともいえる、シュライバー渾身の抵抗。

しかし真に高みへ飛翔した神父には、もはや柳に風。

ト「魔城の核たるゾーネンキントも、劣等として迫害された特定の人種も......生きていてはいけないと思い込まされ、死を想い死に縛られる」

 「なんと哀れな子供たちであることか。光は誰の上にも降り注いでいるべきはずなのに」

子供たちを救済すると決めた神父はもはや揺るがない。

シュライバーを抱きしめ、矛盾した渇望を指摘。

その上で、その本性がただの捨て犬であることをはっきり告げる。

 

この執拗なイジメに、ついにシュライバーの自我は崩壊。

完全にアンナ化し、遠吠えと共にアルフヘイムを吹き飛ばす。

 

 

城を駆ける蓮。

唐突に目の前の景色が変わり、現れたのはショタヘルム。

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正体はイザークなのだが、ベイの姿を借り受け、香純たちの幻影を見せつつ蓮を挑発。

精神的に蓮を嬲り、トドメの一言「おまえのツレは全員殺した」。

蓮のキャパシティを超えた、この致命的な一撃に、怒りを露わにしたのはマリィ。

蓮の身体と渇望を用い“美麗刹那・序曲”を発動。

そのタイミングでちょうど現れた本物のヴィルヘルム。

さっそくベイに斬りかかるも、神父のイジメから逃げてきたアンナちゃんが乱入。

展開が目まぐるしすぎて気持ちが追いつかねぇって!!

アンナちゃん、心の傷をいやせる玩具を見つけれたようでご機嫌。

一方のマリィも、蓮が眠っている間に全て終わらせると戦意揚揚。

斬り結びながら、城の奥へ。

ポツンと残されたヴィルヘルム。哀れだ。

またしても奪われたことに舌打ちするが、おまえ序曲マリィと戦りあったら一瞬で斬首されてたぞ分かってんのか。

 

 

玉座へ続く門の前には、シュライバーに吹き飛ばされ、半身を失い満身創痍なトリファの姿が。

地を這うその様は、矮小で、卑小で、惨めで、醜い塵屑だという地の文。

相性が最悪なマキナにルサルカをぶつけ、エレオノーレの手により聖餐杯を返上。そしてシュライバーの心を破壊。

この奇跡のような策を成し遂げ、笑みを溢すその姿の果たしてどこが醜悪なのか。

愛する者たちのために、最後の最後まで突き進むその姿の何が無様なのか。

今城にいる者たちの中で、最も輝かしい存在は誰なのかなんて、言うまでもないはずだ。

 

いざ、黄金に謁見。

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ラ「来たか。大儀だ聖餐杯。いや......今は何と呼べばよいのかな」

 

無理難題を達成し、ここまで辿り着いたトリファを見て、黄金もすごく嬉しそう。

トリファもまた、自分が変わったいきさつを胸高らかに説明。

玲愛の決意と行動。それが招いた、香純という重大なピースの欠落。

ト「本来なら絶望して然るべき事態でしょうが、笑いましたよ、盛大に」

 「なぜなら今も!この時も!私はテレジアを愛していると分かったからだ!」

娘に対する愛情が、器に引きずられているものではなかった。

その事実が、“邪聖”であった神父を本当の“聖道”へと導いた。

正真正銘、黒円卓で一番最初にメルクリウスの呪いから脱却したトリファ。

ラインハルトも惜しみない賛辞を贈る。

そして約束通り、何でも望みを叶えてやると、トリファに迫る。

黄金の死か。

子供たちの蘇生か。

真の白鳥となった神父の答えは——。

 

 

 

 

ト「一度でよい。イザークとお話になられてください、ハイドリヒ卿」

 

 

 

 「親に見限られる子の嘆きなど、もはや二度と見たくないのだ」

 

 

 

 「褒めてください。私は最期の最期、今この時だけは、逃げずに全うしたのだ......」

 

 

 

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すげえ......。

もうそれしか出てこない......。

本当にすげえ。

言葉が見つからない。

きっと“完璧”とはこういうもの指すんだろう。

この流れ、この展開、このセリフ。

......。

完璧だ。

正田卿は本当に太極位階の人なんだ......。

 

 

 

神父の最期の願い、それが一体何を意味しているのか。黄金は理解できない。

なぜなら総てを愛する男は、総てに興味がないから。

イザークが何者であろうと、皆と同様愛するだけ。特別なことなど何もない。

それゆえ、トリファの言上の真意が分からない黄金。しかしその真摯な願いに感じ入るものがあったようで、

ラ「卿の口上、興味深い。これより無限の彼方まで、私を楽しませると約束しろ」

珍しく感傷的な雰囲気を漂わせる破壊の君は、そのまま側に控えていた赤騎士と黒騎士に命令「客人をもてなせ」。

そして王の間に雪崩れ込んでくる白騎士とマリィ。

いよいよ主人公にも地獄巡りの順番がまわってくる——。

 

 

キャラ雑感

リザ

母として、女として、その存在をエレオノーレと我々爪牙にガツンと叩きつけた偉大なシスター。

イザークと玲愛、子供2人から逃げることをやめた彼女はべらぼうに強い。

あの鉄の女の顔をひっぱたくのは、ベアトリスでもできなかったこと。

これまで間違ってきた分、イザークへその愛をしっかり送ってあげて。

 

トリファ

実質この章の主人公。

そしてこの後の影響も考えると、全体的なMVPもコイツ。

今まで散々悪いことしてきたくせに、この章だけで帳消しになっちゃうくらいカッコイイからズルいよなぁ...。

自分の道を見つけ、歓喜と共に逝けたその最期は実にあっぱれ。白鳥の騎士に偽りなし。

 

 

続き→「Dies irae ~Amantes amentes~」ChapterⅩ 感想Ⅱ - ゆらりゆらりとゆらゆらと

 

 

 

出典元:www.light.gr.jp