「Dies irae Zwei Wirklichkeit」感想
“いつかどこかで見たような女の子が、私達に優しく微笑んだような気がしたのだ”
玲愛ルート改め、黒円卓ルートの後日談。
幻想に魅せられた過去とは違う、真の現実に生きる彼らの物語。
時は1939年。
イブの日に飲んだくれるベアトリス、エレオノーレ、リザ。それに付き合う酒場のアンナちゃん。
もうホントこいつ、最高(笑)。
ベアトリスが荒れているのは雑誌の記事が原因。
そう、「性の6時間」という時代を先取りしすぎなパワーワードに翻弄されているのだ!!
...あっダメだ、なんかこっちまで心が抉られてきた......。クリスマスイブなんて滅びてしまえ。
ベアトリスが犬っころなのは変わりなく。
むしろちょっと新鮮なのはエレオノーレとリザ。
黒円卓時代とは違い、若さがまだ見えていておもしろい。一触即発ムードがちらほら。
国の未来を憂う会話でも、2人の意見はぶつかり合って
エ「つまり貴様、私が間違っていると?」
リ「間違えそうで、怪我しそうよね。自分が絶対いつも正しいと思ってるでしょう、昔から」
エ「なんだ、手袋でも投げてほしいか?構わんぞ」
リ「それで、勝ったほうが正しいってわけ?単純ね」
どっちも負けん気がつよい。
姐さんは言わずもがなだが、リザも内に秘めてるものはかなり熱いな。玲愛ルートChapterⅨで話されていた通りだ。
リザやエレオノーレのこういう所、実に素敵。
こうやって彼女たちが飲んだくれているのも訳あり。
というのも、エレ・リザ・ベアの3人は先ほどまでシュライバー&ヴィルヘルムという2大凶悪犯の大捕物をしていた。
......が、けっきょく戦乙女たちの出番はなく、全てもっていったのはゲシュタポ長官・ハイドリヒ中将。
凶獣と吸血鬼の決闘。姐さん曰く「地上に生まれる地獄」を前に泰然と仕事をこなしていった我らが閣下。
そのイケメンぶりに、ベアトリスとアンナちゃんはそらもう大興奮。
話は夜のベッドルームまでもつれ込み、
ベ「卿、なかなかいい声で鳴く」
ア「謳えよ、その身は私を楽しませる楽器であろうが」
声真似のクオリティも素晴らしい(笑)。
囃し立てる小娘2人に、なんやかんやでブチ切れる姐さん。おいおい可愛すぎるだろ。
「女はしょせん駄菓子」発言がユーゲントの間で噂になってるのはどうにかしたほうがいいのでは、閣下......。
そんな女子会にサラっと入ってくる、冴えない風体の聖職者。ヴァレリア・トリファ神父。
サイコメトリー能力に苦しんでるものの、ベアトリス達の高潔(高潔だと?)な魂に癒される。
リザが国の未来を考え子供たちを育てていることを聞き、トリファの中でも一つの決意が。
さてさて、神父も交えて続く恋バナ。
ひとりだけ一般ピーポーなことに愚痴るアンナちゃんへ、姐さんから超上から目線のありがたい謹言の数々が。
エ「高みが好きなら上るよう努めろ、馬鹿娘」
「上ばかり見て、不平を漏らしながら手を伸ばし、掴めたところでそれは引き摺り下ろしているだけだ。成長とは程遠い」
「要は覚悟だ。それなくして上を見るなど、恥を知らん図々しい行為だと言っているのさ」
足引きBBAだった魔女がこれを聞いたら、いったい何と言っていたか......。
しかし少なくともこの場にいるアンナちゃんには関係のない話なので、
ア「なんか、凄い、ムカつくんですけど......」
と言うのはごもっともである(笑)。
※姐さんとアンナちゃんは初対面である。初めて会った人にこんなこと言って許されるのは姐さんぐらいなので、良い子はマネしないように!
話題は“運命の人”。
話を振られたベアトリス。一瞬アルフレートが言及されるが「そんなんじゃない」と一蹴されてしまう。
マリィはちゃんとアルフレートも抱きしめてくれるのだろうか(笑)。
一方、相手の存在を匂わすアンナちゃん。
家までストーカーして住所を特定するという、犯罪スレスレ(というか犯罪)なことまで行っていた模様。
魔術師関係はみんな変態なのだろうか......。
どうしても件の彼が気になってしょうがないアンナ。
トリファ神父曰く、前世の縁が関わっているのではと推測。
そんな中、不意に現れる意中の相手、ロートス・ライヒハート。
取り乱すアンナちゃんがヒロインすぎて見てるだけで幸せ(*´ω`*)。
アンナを除き、全員ロートスとは初対面。
だけど......
ロ「何て言うかな、今日あんたらに会えたのは嬉しいよ。変なこと言う奴だと思うだろうけど、俺の本音」
「これで良かったんだと思える」
この出会い、いや再会を寿ぐロートス。
取り戻した現実を生きているのだと、魂が感じている。
この、意味不明と取られてもおかしくない発言。
しかし他者の心に感応できるトリファがまず、
ト「私には分かりますよ。ライ......いえ、ロートスさん」
「そしてなぜだか共感を覚えますよ。ええ、確かにこれが私達の現実だ」
目を眩ませる聖餐の器はない、もう道を踏み外すことはない。
ベ「言われてみると、不思議ですね。なんだか長い夢を見ていたような気もするんです」
敬愛する騎士のために、剣を揮っていたかつての戦乙女も呼応する。
リ「目の覚めるような思い......そうね、実は私も、そんな気がしてる」
「これが当たり前なんだけど、すごく懐かしくて切ないような......」
リザだって、もう生まれてくる子供たちを犠牲にするなんてことはない。
話を振られたエレオノーレも、胸に押し寄せる気持ちを否定することはせず、
エ「まあいいさ、腐れ縁だ。どうせこの先も続くだろうし、そういう意味でなら......」
最後に、誰かに置いて行かれることがなくなった少女も。
ロ「今をどう思う?」
ア「わ、悪くないよ。ねえ?」
「「もちろん」」
この掛けがえのない、至高の刹那に乾杯!!
しかしみんなが出会えたのは、この日が最初で最後......。
幻想ではなく、現実を生きた彼らはそれぞれ最期の時を迎える。
ベイとシュライバーは拘束された後に処刑。
トリファはホロコーストに反発後、行方不明。
エレオノーレは名誉の戦死。
リザは双子を出産。レーベンスボルンを軍から守りつつ病没。
ラインハルト・ハイドリヒも史実通り暗殺。
そして……ロートス。戦友であるミハエル・ヴィットマンと共に戦場で散る。
激動の時代を生き残ったのは、アンナとベアトリス。
エレオノーレの葬儀に涙を流すことなく参列したという、ベアトリスの胸中を思うとそれだけで(ノД`)。
アンナはなぜだか自分だけ“人生が一回多い”という奇妙な感覚を抱えながら生きてきた。
そしてだからこそ、彼らの二度目まで生きなければという使命感にも似た強い想いがその胸に。
時は流れ現代。日本で孤児院を営むベアトリスの誘いに応じて、アンナは日本へ渡る——。
その日本では、ベアトリスの下で育った蓮の姿が。
第四天ではそのルーツはモロに水銀だったが、第五天下では立派にロートスとアンナの曾孫。
だが様々な要因により、蓮は祖父母どころか両親すら知らない。
その分ベアトリスのことを強く慕っているのが明らかで、実にほほえましい。
蓮「俺に親がいるとしたら、それは一人だけだから。ちょっと頭沸いてるし、なにかっちゅーとステッキ振り回して人の頭小突きまくる鬱陶しい婆さんだけど」
「ベアトリス・キルヒアイゼンがいれば充分だよ」
ツンデレなのは変わらないようだ。
隠居すると言って孤児院を飛び出したベアトリスを追ってきたんだから、改めて思うに、この身内に対する優しさは蓮の最も大きな長所の一つだ。
そしてそんな親代わりのベアトリス婆さん。
御年83歳だというに、まあ元気が過ぎる(笑)。
老成しても根っこはやっぱりわんわんお(U^ω^)だお。
孤児院をでて諏訪原市に来たのは、リザとの約束を果たすため。
彼女が遺した子供たちを見守るため。
アンナもそれに同意し、かつババトリスと2人暮らしすることに。
お婆ちゃん2人の暮らしなんて蓮でなくとも心配に思うが、さすがは騎士。事前にイケメンヘルパーを雇う用意周到ぶり。
雷速のスピードは健在なのかもしれない(笑)。
月学の編入試験へ向かう蓮を見送り、彼とアンナを逢わせる瞬間を心待ちにする。
ベ「願わくは、彼らの未来が光に満ちていますように」
「私はその道標になれたでしょうか、ヴィッテンブルグ少佐」
蓮が家を出ると、この先の被害者になるイケメンが目の前に。
これより始まるであろうババトリスと戒の逢瀬。
年齢差54歳という、正田卿ですら引いた事実。
“腐敗する祝福”を抜けた彼らのこの現実。どう思います、ヴィッテンブルグ少佐?
意気揚々と街に繰り出す蓮。
初めて訪れたはず、何も知らないはず。
なのに、その胸中はどこまでも晴れやか。
記憶にはないが、誰かとしたであろう大切な約束。
それを果たせるのではないかと、期待に胸を膨らませる。
それは玲愛もいっしょ。
その約束はきっと、欠けている日常のピースを埋めるものであると信じて疑わない。
だから、勝ち取ったこの現実に、思いを馳せる。
玲『私は新しい今を作っていきたい』
蓮『それこそが』
玲『夢の残像にも決して負けない、幸せの形だと思うから』
街中を歩く、絆のメンバー。
すれ違いざま、2人は約束を思い出す。
——女神の抱擁はどこまでも優しい。
キャラ雑感
エレオノーレ&リザ
THEベストコンビ。
幻想にならなかったため、2人とも若くして逝ってしまったが、それこそ彼女たちが人間として生を全うしたのだという証明。
両者とも“腐れ縁”ということを悪く思っていないのは、本編でも言っている通り(・∀・)ニヤニヤ。
ぶっちゃけおまえら好きすぎてたまらんのだ!!
シュライバー&ヴィルヘルム
直接の登場こそなかったものの、こいつらも悲惨な生涯を終えた模様。
最後の最後、閣下の計らいで全力燃焼させてもらえたのがせめてもの救いか。
まぁ、こいつら続編で救済されるしな。
トリファ
生来のサイコメトリー能力に苦しんだ神父。
結局その業は拭えなかったものの、逃げずに自身の聖道を突き進めたのはよかった。
ロートスの意見に最初に反応したのも、個人的にはすごいうれしい。
ミハエル
......「死んだ」という一文しかなかったなおまえ!!
ミハエルに関してはもう充分書ききったということなのか。
あの酒場のシーンに入れてやってもよかったろうに、と思わなくもないが。
......いやこの徹底した割り切り方こそ、彼を表しているといっていいのか。
Nihil difficile amanti→「Dies irae Nihil difficile amanti」感想 - ゆらりゆらりとゆらゆらと