“拭えない性を持ちながら、その本性を封じ込めて社会の規範に礼を払う”
“秘めておくべき業を自覚できた自分のような存在こそが、悲しさを理解できる同胞として彼らを裁くべきだと実感した”
鈴子ルートラスト。
いろいろ酷いこと言ってしまったが、なんだかんだ鈴子の覚醒は熱いし、四四八の決意も滾るものがあったので、決して悪いものではなかった鈴子ルート。
ラストダンジョン伊吹内へ突入する四四八と鈴子。
待ち受けていたのは、怪獣と化したキーラちゃん。姉妹たちと無理やり身体を人体錬成された酷い姿で登場。ロリっ娘サンタクロースがどうしてこうなった......。
能力の向上もシンプルに3人の足し算。キーラが持っていた驚異的な回復力はそのままに、アタック担当にレムス、マジック担当にロムルスが配されたことで、攻防に隙なし!
キ「ほら、見てよお父様。キーラは強くなったでしょ?狩りもこんなに上手くなったの、だからお願い。これ以上繋げないで」
「薄汚い人間風情が、下郎の分際で私の邪魔をするんじゃないッ——!」
「「ねえ——そうでしょう、お父様!」」
キーラの悲惨な背景が垣間見えた瞬間。正田......どうしておまえはロクでもない親父しか描かねえんだっ(憤怒)!!!
鈴「あいつは、私が斃さなければいけないんだわ」
「だって......分かってしまったもの、あれは私の敵なんだって」
「あんな奴が生まれない世の中を、これから作ろうって決めたじゃない。だからそのために、お願い、一人でやらせてほしいのよ」
殺しを躊躇しない野獣のごとし存在、それを目の当たりにした鈴子はタイマンを決意。四四八を行かせ、同属退治と意気込む。
場面代わって、鳴滝vs幽雫。
戦力比は幽雫が優勢なのだが、空亡戦を経たことで鳴滝の実力は著しく向上おり、幽雫にその実余裕はない。さらに幽雫のサーバー先である四四八が辰宮勢を敵(仮)認識しているため、幽雫は全力をだせない始末。したがって、戦局がどう転ぶかはまったくわからない。
そんな益荒男2人が雌雄を争っているのを見て、百合香さま大興奮!!
“わたくしは受領される男の景品。彼らに組み伏せられる時を求めて、その激闘へと手を伸ばした”
“自分の前で、こんなに激しく、真実を晒しているのね——素晴らしい”
自然と強度を増していく百合香の破段。微笑みがどこまでも終わってる......。
堪らず鳴滝も声を荒げる。
鳴「見ろよ、あの馬鹿女を!今も嬉しそうに笑ってやがる......ッ!俺もあんたも何もかも......酔っぱらったお花畑の蜜蜂だ、あれでいいはずねえだろうが!」
「どうして、殴ってやらなかった!どうして、道を示してやれなかった!」
「戦の真はどうしたんだ」
鳴滝渾身の雄たけび。役者さんの演技が熱くて、こっちまで幽雫を許せなくなってしまうよ。
そんな幽雫も言われっぱなしで終わらない。胸の内は語らずとも、激情を隠そうとしなくなった。
ヒートアップしていく戦場に比例するようにお嬢様の表情も蕩けていく。変態度合いが水銀みてえだ。
幽雫が百合香にぞっこんなのは、先の回想で承知済み。だからこそ、鳴滝は幽雫こそが百合香の矯正役にならなければならないと強く諭す。
しかし、幽雫から返ってきた言葉は鳴滝にとってまったくの想定外のもの。
幽「なぜそこまで怒る?関係ないだろう、他人事ならな。そもそも前提から見落としているのはそっちだろう」
「答えろ......なぜ今もおまえはお嬢様に惹かれていない?過去最大の香気が渦巻くこの部屋で、どうして正気を保っているのだ?粒だね揃いの戦真館で、いったい何故、おまえだけが」
百合香の破段は嵌れば神野ですらキマる凶悪無比なもの。唯一効かない例は前々話で狩摩が明かした通り「元から百合香に惚れている者」のみ。
邯鄲で一度も百合香の術中に落ちなかった鳴滝、それはつまり......。
急に突き付けられた昼ドラ的事実!動揺した鳴滝の一撃が、思いもよらない軌道を描いたために、幽雫へクリーンヒット!!
身体に風穴を空けられ、勝負は決まったかにみえたが......愛の奴隷こと幽雫くんは倒れない!気力で踏ん張り、返す刀で鳴滝の首を一閃。軍配は幽雫に上がる。
幽「ご満足いただけたでしょうか、お嬢様」
百「ええ。大変満足いたしました」
幽「それはよかった」
事務的な連絡なものの、初めて百合香から褒められた幽雫くん。
百合香は満面の笑みで「自身を愛(殺)せ」と命じる。悲劇のヒロインとして最上の形を迎えられることに、感無量といったご様子。
そんな様を見届けて、己の本意が届かなかったことに落胆する幽雫。「次こそ必ず」と。相変わらず優しい笑みを浮かべて
幽「然らば、今日はこれまで」
自刃。
従者の死に、百合香の脳内は「?」でいっぱい。言いつけを守るだけの忠犬と断じていたが、実際違ったのかと、ようやく彼の本質に考えを巡らせる。
......がこれまで盲目だった女が、ここで都合よく真実にたどり着けるわけもなく(^o^)。「とりま楽しかったわぁ」とどこまでもお花畑なお嬢様の笑顔で、今回の昼ドラは終了。
場面は鈴子vsキーラ姉妹に戻ってくる。
鳴滝同様、鈴子も前話の死闘で大幅なパワーアップを遂げたものの、怪獣キーラの強さがそれを上回る。実質廃神クラスに上り詰めたわけだが、鈴子は頑として彼女の現状を認めない。
鈴「人間であることを簡単に放棄して、冗談じゃないわ。馬鹿じゃない」
「良心を持たないことがそれほど自慢?楽しく敵を殺せることがそんなに偉いの?格好いいって?違う。絶対に違う。こんな才能、単なる適応不全だもの」
キーラと自分は同じモノを持って生まれてきた同類だと理解。四四八と語らった「規範と礼を持った社会」を目指すべく、鈴子はキーラに手を差し伸べるが......
「おまえバカ?m9(^Д^)」
とっくに人間やめてるキーラちゃん、鈴子の言ってることが理解不能。どころか共存なんかクソくらえと完全拒絶!
鈴子も気持ちを切替え、倒すことに意識を集中。
“破段、顕象——”
鈴子、破段を獲得。
その効果は「振るった斬撃が、そのまま残留する」というもの。闇雲に刃を振るだけで、不可視の刃がそこに残る——正田作品でも珍しい設置型の攻撃能力。シュピーネさん以来か。
人と、人の皮を被った獣......その線引きこそ己の進む道に不可欠と至った上で顕現した力。14歳神は相変わらずキャラと厨二能力の結びつけが上手いぜ......!
刃の軌跡がキーラを囲う、さながら檻。動くたびに裂傷を抱えていくキーラ's。
しかし勝負は甘くない。作中随一の脳筋ことキーラちゃん、全身血だるまになりながらも、ひたすら前進!回復力頼みな超強引プリズンブレイク。
檻が突破されるのも時間の問題。どうするべきか考えを巡らせる中——突如感じ取ったのは鳴滝の死!悲嘆し、それを見て嗤うキーラ。
絶叫する鈴子、最後の問い。
鈴「あんたは本当に、社会や他人はどうでもいいの?野を馳せる魔獣(ケモノ)として、好きに生きるつもりなの?ねえ、答えなさいよキーラ」
「あんたは人界(ここ)に住む気がないというのね!」
キ「当たり前だ!」
鈴「なら潔く、人の世界から消えなさい——ッ!」
鈴子の問いかけに是と答えたキーラ。お互い無自覚ながらに、強力強制が成る。
ここに顕現する鈴子の急段。「人界に住む気が無い」という言葉そのままに、鈴子の一撃はキーラ姉妹を世界から追い出す致命の刃に生まれ変わる。
先ほどまで脅威だったロムルス・レムスを瞬く間に排除。訳が分からず狼狽する長女へ、お構いなしにラストの一振り!己こそが壊れた人種たちの代表者だと、覚悟ガン決まりの鈴子の一撃に気分爽快(*^-^*)。
限界を迎えた彼女はここでリタイア。
——そして、伊吹の最深部へ向かう四四八。いつも勇敢な彼だが、この時抱いた感情は、
“おそらく敵わない——このまま行けば、俺は死ぬ”
空亡を乗り越えた四四八ですら、希望が皆無。 やばすぎ。
それでも、記憶に無い使命感を基に、いざご対面。
甘「ようこそ、もう一人の盧生(イェホーシュア)。俺たちは同じく資格を持つ者だ。現実(うつつ)へと夢を持ち出すこと、ただ二人だけ可能としている。現状だがな」
邯鄲の戦争の総元締めでもある甘粕へ、改めて四四八はその目的を訊ねる。
しかし意外や意外、甘粕自身は戦争を嫌っており、世に蔓延る不平等・不公平も嫌悪。敵が主人公っぽいこと言い出しはじめ、困惑する主人公。
さらに甘粕は愛や勇気といった、人間が土壇場で生み出す輝きを“至上の美”として褒めはやす。悪役が聖人みたいなこと言い出してますます困惑する主人公。
——しかし、彼の本題はここから。
平穏な現代社会で、甘粕が尊ぶそれら輝きは悉く失われていった。優しさをはき違えた法律やシステムが跋扈し、世界は腐敗してしまったと嘆く。このあたり例え話、かなりリアルかつ過激なこと言ってるので、見る人が見たら大炎上しそう((((;゚Д゚))))。
四四八は甘粕の談に大いに共感。彼の根底にあるのは、四四八の矜持でもある“我も人、彼も人”のため。
次いで、甘粕はここまでたどり着いた四四八を称賛、その強さを本物と認める。だがそれは「邯鄲」という命を脅かす異常があったからこそ発現したもので、日常生活に甘んじていれば永久に目覚めなかったであろう可能性を激しく危惧。
ゆえに、彼の望みは
甘「だから——俺は魔王として君臨したい!」
「俺に抗い、立ち向かおうとする雄々しい者たち。その命が放つ輝きを未来永劫、愛していたい!慈しんで、尊びたいのだ。守り抜きたいと切に願う」
「絶やしたくないのだよ。おまえや、おまえの仲間のような人間を」
「人間賛歌を謳わせてくれ、喉が枯れ果てるほどにッ」」
「人」という種の前に立ちはだかる絶対的な困難として在りたいと宣言。
甘粕の考えでは、盧生となれる人間は世界規模でみれば万はいる見立て。そんな未知の彼ら彼女らを邯鄲へ誘い、並列させて全人類を夢へと落とす。最終的には第八層へ至らせ、世界中を神・悪魔だらけにしてやろうと魂胆。乱世も乱世。平穏が一縷も存在しない、人が永久に試される世界の誕生......それこそが、甘粕の楽園(ぱらいぞ)。
現在召喚させている神野と空亡は、あくまで試練の一環。精神面を神野、肉体面を空亡がテストしているといった具合。
......どっちもやりすぎってレベルじゃねえけどな!!!
そんな空亡の再来を暗示しつつ、アレを鎮めた栄光を称賛。まさに甘粕が望んだ人の輝きそのものだったと、栄光の評価は最上のものに。
しかし、当然四四八からすればあの悲劇は堪ったものでなく......ここに不俱戴天と断定!
本人を前にして打倒を表明。四四八が望むのは、先人への敬意と後進への道標を示せる世界。鉄風雷火なんてものは、どこの世界でも必要とされないんよ。
敗北は必定、それでも四四八は決死の覚悟で勝負を挑む。
......が、甘粕は“今”ではないと告げる。
甘「俺は既に邯鄲の全行程を修了している。ここまで到達するのに十年、何百もの未来と可能性をこの身にしかと刻み込んできた」
「対しておまえはいったい幾つだ?二つか、三つか。二桁にさえおそらく達していないだろう。仲間の分を足したとしても、差は歴然という他ない」
「それに、本当は分かっているのだろう?今のままでは決して勝てんよ。以前と同じ結果を順当に辿(なぞ)るだけだ。これほど不毛なこともあるまい」
「俺もあれは少々はしゃぎ過ぎた」
甘粕がはしゃぎすぎた全容は、もうちょっと先で明らかに。
いい笑顔で立ち去る甘粕。同時に四四八も、邯鄲の真実にたどり着く。
エピローグ。
現実世界は他ルート同様、改変。
世界から軍事力が消え、さぞ平和になったかと思いきや、時代は経済戦争へ突入。兵器の代わりに札束で殴り合う時代に。
陰謀・抗争なんでもござれ。日本は各国に比べマシなものの、「死亡税」なんていうとんでもないものが導入されていた。国にお布施しないと墓にも入れない(;´Д`)。
そんな時勢の中、戦真館は総代選挙真っ最中。
候補者・我堂鈴子が掲げる目標は「課された義務と権利の自覚」。礼を以て、社会の規範と秩序と向き合っていこうという、鈴子だからこそ芽生えた想い。いつになく堂々とした風情はたいしたもの!
演説が終わり、壇上には入れ替わりで四四八が登壇。
すれ違いざま、不敵に笑う両者。
四「俺が勝ったら......我堂、おまえは副会長になれ」
「皆で勝ち取った未来を、俺たちの手でより良いものにしていくんだ。生きている俺たちには、そのために命をくれたあいつらへ恥じる生き方をしてはならない」
「その責務を感謝と共にまっとうしたい」
「生きていくぞ、この世界で」
鈴「ええ、胸を張ってね」
キャラ雑感
柊四四八
主人公なのに戦闘描写がなかった.......。
今ルートはとにかくサブキャラたちに焦点があたりすぎたため、影の薄さは随一。母の仇討ちはおろか、友を2人も死なせており、そんな終わり方で良いのかおまえと思わずにはいられない......。
我堂鈴子
こちらもヒロインなのに魅せ場がかなり食われてしまった、悲劇の女。
そこそこ大きな闇を抱えていたが、数クリックで解決。急段も、発動できたにも関わらず、詠唱はおろか名前すらないΣ(゚Д゚)。
今作品一番の被害者かもしれない。
大杉栄光
作者の曾祖父。実質このルートの主人公。
元々不快感のないキャラだったのに、このルートで震えるほどのカッコよさを見せつけてしまったがために、ユーザーはおろか、ラスボスすら萌え豚にしてしまったとんでもない男。
これでまだ魅せ場が残ってるっていうんだから、おっかないことですよ。
正田の曾祖母。このルートのメインヒロイン。
史実だといろんなことに破天荒だったわけだが、正田卿ならではの解釈で、そのあたりしっかり理由付けされた(これがまた見事)。
確たる自分を持っており、容姿・性格ともに最高の一言。
鳴滝淳士
これまた主人公より主人公してた男。
こんなに無骨な奴なのに、ドロドロの三角関係に関わっているのだから面白い。
しっかりした考え方を持っているのに、惚れた相手がよりにもよってアレなのが、妙にリアル(笑)。
辰宮百合香
正田崇が生み出した、驚異のダメ女。
破滅的な女性キャラは数あれど、こいつはまともな風を装ってるからタチ悪い(笑)。
渦中の2人が良い男なのが、ことさら悲しいぜ。
幽雫宗冬
百合香の最大の被害者。
スペックが高いため、本来なら主役勢を導くカッコいいキャラのはずなのだが、情けない姿のほうが印象的(お嬢様が悪いよお嬢様が)。
真の実力を見せるのはまだ先。
百鬼空亡
ついにバトった最強生物。
あの狩摩をも力押しで倒してしまうんだから、実力は本物。
栄光のような搦め手も搦め手な手法でなければ撃退できないため、甘粕はもうちょっとバランスってものを考えるべき。
キーラ
作中屈指の美人キャラだったが、正田が性癖をガマンしきれなかったせいで、作中屈指のゲテモノキャラに。
スペックは相当なんだろうが、前話で空亡が大暴れしたり、最後は鈴子にサラッと殺られたりと、どうにも強さが伝わり辛かった印象。正田の罪は重い。
ついに表舞台にでてきたラスボス。
決して悪性の人ではないにせよ、考え方が極端なため、主役にはなれない。早くも馬鹿の片鱗をみせてくれて、謎の安心感。四四八はやく何とかしてやってくれコイツ。
あらためてやっぱり「詰め込みすぎだな......」という感想になってしまうこのルート。鈴子のキャラ自体はすごく良いので、なんかもったいない。
さあ、残るはもっともめんどくさい女だ(^o^)。