ゆらりゆらりとゆらゆらと

あたまの悪い男が、起こったことを忘れないためのボケ防止日記

『相州戦神館學園 八命陣』鈴子ルート第九話 感想

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“そして、彼の誇る愛情(さいきょう)が病んだ龍へと炸裂する”

 

この作品で恐らく1、2を争うエピソード。

『amantes amentes』とはまさにこのことでは。

 

 

開幕、いきなり説明されるのは関東大震災について。

ja.wikipedia.org

東日本大震災すらとんでもない大災害だったのに、あれを超える死者・行方不明者の数......。日本が抱える恐ろしさを改めて感じさせられます。

そして百鬼空亡の正体は、その関東大震災のイコン。

“その日”が近づくごとに強化されていくその暴威。

盧生・甘粕が与える最大の試練。よりにもよって、強さだけでいえば空亡は甘粕を遥か上回るとのこと。

召喚獣扱いなため、召喚者に反旗を翻すということはなく。まさに絶体絶命。

 

 

 

戦真館&神祇省vs裏勾陳。

空亡の周りに集まる魍魎こと“凶将陣”が吶喊。

まず、狩摩が辰宮邸に施された巒頭風水を用いてコレを捌く。

続く二撃三撃は、鈴子の統制の下迎撃に出た戦真館によって防衛。命の瀬戸際ということもあってか、個々の力は飛躍的に上昇。過去最高の連携を見せる! 

しかしそれでも、単純な数に圧されていく戦真館・神祇省同盟。 

空亡本体は何もしてないのにこの有様よ......( ;´Д`)。 

 

勝機が欠片も見えない中、一人狩摩だけが事態の解決方法を察している。 

それは“人身御供”。それも龍神が満足するような極上の供物。 

狩摩の当初の予定は、空亡襲撃によるショックから四四八を解放。そのまま百合香を贄として捧げて、七層クリアを目論んでいた。 

が、蓋を開けてみれば百合香は龍好みの人柱といえず、かつ幽雫くんの鉄壁ガードもあるため、作戦は破綻。 

野枝をチラリと見るも、彼女も格式としては足りない。 

そうなってくると、残りは戦真館の誰かなのだが...... 

 

 

そんな外の様子を感慨無く眺める百合香嬢。 

もはや諦観の域で、「さっさと自分を捧げればいいのに」とこぼす始末。 

すると、幽雫くんがボソッと諫言を 

幽「お嬢様が、相応しいとは思えません」

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突然のカミングアウト!なんと幽雫も狩摩と同じ意見だった。

そのことに納得いかず、かつ初めて意見を具申されたことに動揺を隠せないお嬢様。 

詰問するも、幽雫くんは答えず出陣。 

ここにきて好き勝手な従者くん。ならばと、お嬢様もなにやらお考えがあるようで......(´・ω・`) 

 

 

戦場の最前列に踊りでる幽雫。 

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胸中は主への思いで複雑。彼の人間臭さがやっと伝わってきて、ブログ主的にはコッチの方が好感もてます。 

背後に居並ぶ後輩たちへ、最後の教導。敵対してしまったものの、彼らへ抱く気持ちは決してマイナスなものではなかったために。 

 

“破段、顕象——” 

 

ついに固有能力をお披露目。その力は「対象が幽雫へ近づくほどに軽くなる」。 

効果範囲内に入ったモノは悉く重量を失うため、突進しかしてこない凶将陣には効果覿面。次々と薙ぎ払っていく! 

彼がこのような破段を獲得した経緯......届かない主への想いが発端。 

彼女へ捧ぐ愛、しかし本人には一生届かないその絶望。すべてに価値を感じえなくなってしまった結果がこの能力。 

恋は実らず。されど他のことに興味も持てず。自分自身すら無価値と断ずる自閉した青年へ、熱い男が怒りを露わに。 

 

鳴「恥ずかしくねえのか、あんたはッ」 

 「そうやって見切り付けたあげくがあれか......喜べよ、あの箱入りとお似合いだぜ。どっちもどっちだ、甘えんな」 

 「どうして、馬鹿を叩き直してやらなかったんだ」 

 

ここにきてようやく鳴滝にも魅せ場が(''◇'')

迫りくる魑魅魍魎の群れに、傷つきながらも前へ。

幽雫の破段圏内に入っても、それでも前進を止めない。

振るう剛腕は、これまでの比にあらず。大地が陥没せんほどの破壊力。

ここに鳴滝も破段を獲得!効果は単純「自身の重量を増やす」。

“自分より大切な誰か、なんて言葉を信じてないし嫌っている” 

“仲間や絆のためにこそ自分に自信を持つということ” 

“浅い男を信じた馬鹿にしてなるものか、あいつらは見る目があったと証明してやる、そのためにも” 

“俺は負けない。俺は重い。地球よりも、ずっともっと——誰よりも” 

他者を思うがゆえの自意識。自分自身がブレてしまっては、誰も守れない救えないという、優しさとプライドの表れ。

栄光といい鳴滝といい、ここにきて魅力を放ちまくってやがる。

 

前線で並び立つ幽雫と鳴滝。

お互い忌み嫌いながらも、能力の相性は最高。敵が軽くなったところへ、鳴滝の戦車みてえなストレートが炸裂。

凶将陣の数が見るからに減っていく。

仲間たちの表情にも微かに希望が湧いてくる。逆転劇の兆しがほんのわずかにも見え始めてきたが——

 

 

“遠神笑美給、遠つ神愛み給へ。一切衆生の罪穢れぇ” 

“くちおしや、あなくちおしやぁぁー” 

 

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狩摩が敷いていた陣が崩壊。

これにより、標的を見失っていた空亡の瞳が、その場の全員を捉える。

 

結果、全・滅

 

原型を保っていられたのは破段にある鳴滝と幽雫のみ。魍魎たちは灰燼と化し、空に聳えるは空亡のみ。

一睨みでこの有様なのだから、こりゃムリゲーってレベルじゃねえぞ......。

 

最後の綱である狩摩も、悪あがきが速攻でバレ、首を一瞬でチョンパ。

一縷の望みも絶たれる間際、首だけになった狩摩がド派手な遺言。

 

狩「聞けや、小童どもォ!空亡は斃せん!」 

 「勝つ死ぬ生きると言っちょる内は見当違いよ。気概のある奴ァ、忠を示して柱となれいッ!」 

 

皆殺しにされるまで、あとわずか。

狩摩の今際の言葉は“神様の正しい鎮め方”。

察する鈴子。だが、「だれかを捧げばなければいけない」という激しい重圧が。

どのみち待っているのは全滅。指揮官として、下さなければならない決断。

 

 

鈴「無理よ——できない」

 

 

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まだ10代やぞ......! 

仮にこの場に四四八がいたとしても、出来ない決断だろ。 

 

鈴子が判断に迷っているところで、空気と化していたお嬢様が突然の暴走!

破段を空亡相手にフル稼働。空亡側としては「おまえかよ......まぁいいけど(-᷅_-᷄๑)」といった具合で渋々狙いを定める。

これに鳴滝&幽雫がすぐに反応。 

瀕死の体ながら、即席の連携でお嬢様を救出。 

身を挺して庇った鳴滝。百合香にしてみればある種理想の展開か。 

そのまま突発的に彼の背に追いすがる。幽雫から言われた「人柱として相応しくない」という言葉の意味。鳴滝に尋ねると、全ユーザー納得の答えが。 

鳴「あんた自身が、手前(てめえ)を大したものと認めてねえ。なのにそんなガラクタ捧げて、いったい何になるんだよ。どうでもいいもん寄こされて、それで喜ぶわけあるか」 

 「そういうものばかりを、あんたは貢がれてきたんじゃねえのか」 

空亡に行った行為は、そのまま自分が今までされてきたことと何も変わらないことを気づかされる。鳴滝は粗暴にみえて、かなり物事を見てるよな。 

すぐさま死地へ翻そうとする鳴滝を、引き留める百合香。年相応のヒロインらしさが出てきたものの、漢・鳴滝は最後まで振り返ることはなく。 

 

 

ただ状況はなにも好転せず。 

“震災”の象徴として、ますます膨れ上がっていくマグニチュード。 

鳴滝と幽雫の抗戦も、時間稼ぎにすらならない。 

 

今度こそ訪れる必滅を前に、栄光は完全に心が折れてしまう。死ぬことが恐ろしく、半べそ状態。 

隣には野枝。横たわる彼女の半身もすでに……。 

「守る」と誓ったはずが、この体たらく。誰だってしょうがないと思うのだが、栄光はたまらず悔し涙。 

そんな野枝本人は......優しく微笑む。 

死に場所を選ぶことができたこと、最期に愛する人の隣にいれたことに感謝。 

そうして今際に 

 

 

 

 

野「願わくば、どうか......ちゃんとまた、私のことを好きになってくださいね」 

 

 

 

 

——その言葉が、栄光に真実を取り戻させる。 

記憶の残滓にあった、本当の最初の出会い。 

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その時から、栄光はずっとずっっっと、伊藤野枝という少女に釘付けで、出会うたびに何度も惚れて。 

——彼の戦の真が再動する。 

 

“破段、顕象——” 

 

龍の一角が消滅。 

のみならず、走る大震を彼方へ逸らす。 

距離・ベクトルといった世界法則そのものをキャンセル。 

この瞬間、間違いなく栄光が作中最強格に。 

空亡と互するどころか、一方的に圧していく。

......しかし、その代償は甘くない。腕、内臓といった各器官が次々と機能しなくなっていく。 

栄光の破段は「等価交換による、あらゆるキャンセル」。 

この“等価交換”が実に肝で、なんと釣り合うかどうかは栄光の匙加減! 

龍神という神様相手でも、栄光の中で引き換えが見合っていると判断されているため、この破段は成立。 

Dies irae』で蓮が螢に言った「大切なものは、地球とだって釣り合わない」というセリフが思い返される。一見栄光のコレと真逆に聞こえるが、本質はいっしょ。要は物の価値を決めるのは当人次第。栄光が大切だと思うものは、神様とだって引けを取らない。 

さらに今回のケースでいえば、空亡自身も供物を求めているのが大きい。栄光が捧げてくるものに対し、抵抗するどころか喜んで受け入れている。よって自然と成されている“協力強制”の関係。破段だが、性能は急段と遜色ない。ってか見る限り終段レベル。 

ということで次々とキマッていく栄光の破段!四肢や感覚と引き換えに、龍頭を消していく。 

 

喪失していく栄光に、恐怖はない。 

自分が血を流す以上に、人を傷つけることを恐れてきた。 

優しさこそが彼の本分なのだが、戦いに向かないその性格にずっと悩んできた。 

が、そんな迷いもここで払拭。大切な人のために命を投げ出すことなんか、栄光を怯ませる要素になりえない。 

 

ついに残すは空亡本体。 

栄光が最後に捧げるのは、最も大切な“心臓”。 

野枝の手を借り、愛の力によって、荒ぶる龍神をここに鎮める——。 

栄光の死と引き換えに訪れる静寂。幽雫すら彼の生き様に感嘆するほど。

遺された仲間たちはただ悼むしかなく......空しい勝利を迎えることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空亡再来。 

そして全てを嘲りながら現れる神野。 

神「八百万(ビッチ)は男をよく見ている......いい線いっていたけど、惜しかったね。貢いだお金が足りなかった」 

自らの命を差し出した栄光。だがそれは“仲間のため”という大前提あってこそ。つまり、仲間の命>自分の命。 

「真に捧げなければならなかったのは仲間たちだったね(^◇^)」と楽しそうに笑う演出家。 

 

始まる空亡第2ステージ。 

暴威は変わらず、瞬く間に再び蹂躙されるも、栄光の奮戦を見届けたあとでは死んでも死にきれない戦真館たち。彼の奇跡をムダにしないためにも奮起する。 

 

 

 

空間を揺るがす大破壊は、辰宮本邸にも被害が。 

百合香2回目のピンチに、今度は幽雫が盾となる。 

先の鳴滝の発言で、自身の核が揺らいでいるお嬢様。今さらどういう生き方をしていいか分からず、目の前の従者にポツリと問う。 

それに返す幽雫。その表情はとても穏やかで

幽「なぜなら俺は、このような香気(じゅつ)ではなく、そして生まれの貴賤も関係なく、あなたを愛しているからです」 

 「狂おしいほど、ただ一途に」 

 

 

言えたじゃねえか......。

 

 

いろんなサプライズに、ついに百合香の世界がぐらつく。

その機に乗じて四四八の意識が一気に浮上!

その最中で、これまでの経緯も流れ込んでくる。......栄光の犠牲は四四八にとっても筆舌に尽くし難く(ノД`)。

 

そんな四四八を辰宮邸に引き寄せるべく、野枝が距離をキャンセルし、鈴子が手を伸ばす。ここの鈴子のCG絵はとてもキレイ。

ちな正田の発注はコレ↓

 

Gユウスケ氏の大変さを垣間見た瞬間である。 

 

戦地に降り立った四四八。

栄光が示した奇跡を基に、新たな破段を顕象。

“犬山道節——忠与” 

効果は「鎮魂」。vs空亡に特化したこの破段により、今度こそ龍神は退場。

失うものがあまりにも大きすぎたが、四四八たちの戦いはこうして幕を閉じる。

 

 

——そのフィナーレに、空亡の飼い主はご満悦。

四四八たちの奮闘を心から賞賛。

一方、もう一匹のペットは平常運転。

神「退屈だなぁ、つまらないなぁ。少年少女の青春模様(じゅぶないる)で、アバズレも喝入れられて更生完了。これで第七層(ハツォル)もおしまいとは、呆気ない幕切れだ」 

そんなペットの意見にしっかり耳を貸す飼い主。満足したかと思いきや、延長戦をすることを決意。

四四八の受難はもうちょっとだけ続くんじゃ。

 

 

第10話→『相州戦神館學園 八命陣』鈴子ルート第十話 感想・壱 - ゆらりゆらりとゆらゆらと

 

 

出典元:www.light.gr.jp