『相州戦神館學園 八命陣』歩美ルート第十話 感想・壱
“我らが盧生とその眷属よ。さあ戦の真を見せてみろ”
歩美ルートもいよいよ最終決戦。
ただのステゴロとは一味違った戦い。正直歩美以外に適役いねえ(笑)。
一番最初に痛手を受け、鳴滝と晶は彼女を庇ったがゆえにボコボコにされた。
敗因は間違いなく己の不甲斐なさ——だというのに、そのことを冷静に受け入れている自分にゾッとする水希。
いつの間にか負けることに適応してしまっている......そんな“戦の真”からかけ離れてしまった自分を嫌悪していると、聞こえてくる熱烈ファンの声。
神「一人だけの世界、一人だけの会話......そこに絆なんか、生まれ落ちようはずもない。つまりは世界が閉じている。いつまでも塞いでいられる気分っていうのは僕には分からないけど、君は篭の鳥でも気取っているつもりなのかい?」
「嬉しいのは分かるが本気を出せよ、僕の愛しい水希ィ......」
「それができない限り、このユメはずっと続くというのにねぇ。くふふふっ」
露骨に意味深な挑発。しかし水希は怨敵の登場で戦意が上がるのみで、肝心の真実まで辿り着けない。
落胆する神野。結局今回の水希はここまで(;´Д`)。
そしていよいよ戦真館vs神祇省。
その地は既に狩摩のテリトリー。マップ構造が“将棋の盤面”だと当たりをつけた四四八。狩摩の術中にハマらないよう、型にとらわれない行動をとる。道すがらで、各々獲るべき相手を最終確認。
......しかし、これら全てが狩摩の掌の上。
勝負師の愉悦に満ちたゲームが始まる。
“三国相伝陰陽輨轄簠簋内伝——”
“急段・顕象——”
“軍法持用・金烏玉兎釈迦ノ掌”
陰陽師でおなじみ安倍晴明の書物『三国相伝陰陽輨轄簠簋内伝金烏玉兎集』から取ってきたか。「釈迦ノ掌」というのが、万事思った通りにする狩摩らしい。
長々と準備したせいもあってか、テンション爆上げで謳いあげるんすわ(^O^)。
発現する狩摩の急段。協力強制の内訳は「相手が狩摩とのゲームであることを了解し、それに則った動きをとること」。
聖十郎とは対照的に、かな~り複雑かつ胡乱なこの条件。しかしその分、決まったときの効果はバツグン。7話で他勢力を軒並み退けたことからも、十分察せられる。
なおキーラちゃんや空亡みたいな脳筋たちは「ゲームである」という前提条件がわからないため、アホの子ほど得をするという珍しい能力。
そうして文字通り盤上の駒となった四四八・鈴子・栄光たち。
歩美は狩摩の前に対局相手として引き出される。過去の己と決別すべく気合は十分!
肝心のゲーム内容は『大将棋』。
Wikipediaを見てみるととんでもない盤の大きさと駒の数(´゚д゚`)。これを知ってる歩美の異常さよ......。
そんな盤の中で行われる戦真館vs鬼面衆。与えられた駒の役割に沿いつつの戦闘に。
仇討ちに燃える四四八、だがそれに負けず劣らずの気炎を上げるのは、
栄「——来たぜ。ああ、来てやったさ」
「確かにあんたの言う通り、オレはビビりだよ。向いてないのかもしれねえし、仲間たちに迷惑だってかけてるだろうさ」
「それでも、こんなオレにだって懸けてるものがあるんだよ。月並みな言葉になるけど、生半可な気持ちじゃねえ」
泥眼へ気持ちのこもった啖呵を!後に甘粕がほれ込むのもムリないぜ(・ω・)ノ
そして鈴子も夜叉をロックオン。その正体が、四層で共に過ごした穂積百だと感じ取っており、連れて帰ろうと奮起する。
歩美vs狩摩の運命の対局。
改めて状況を整理すると
・ゲームは『大将棋』
・配置された駒の中には、鬼面衆と四四八たちが
・歩美も狩摩も、どの駒に四四八たちが割り当てられているか不明
ただでさえ複雑な大将棋のルール。加え、狩摩の指し手は定石を度外視した一手。仲間の命を握っている歩美のプレッシャーは測り知れない。
盤上は3局面。
鈴子(飛車)vs夜叉(角行)。
夜叉の無駄のない攻撃に対して、感情的に刃を振るっていく鈴子。
鈴「何を似合わないことやってるのよ、あんたはッ——」
「戻ってきなさいよ、百。あんたは確かに要領悪くて、いつも憶病で、そのくせ一人でいられない寂しがり屋だったけど......そんな百のいる毎日も悪くないって、私は思ってたんだからッ......!」
まるで鈴子自身のことを言ってるようじゃないか......。だからこそ放っておけないんだろうなというのが伝わるセリフ。鈴子は良い女だ。
そんな彼女の馬鹿正直な攻勢は、夜叉の動きを鈍らせる。ついに一撃当てるところまで!
割れた仮面から覗いた顔は......
夜「あれは私の妹ですよ」
“破段・顕象——”
“夜叉面・阿修羅———”
畳み掛けるお姉さん。
能力は名前通り「腕が6本になる」という地味of地味。
通常時に扱う“剣の雨”を越えた先に待つ6本腕による蹂躙......これが夜叉の必勝パターン。
コレに見事にハマった鈴子。血だらけで敗色濃厚、しかしそれでも心は折れない。
夜叉はその様を見つめ、戸愚呂弟よろしく「絶望感足りないんじゃね?」と煽りだす。
夜「あなたのお友達は可愛らしい現実逃避で戦を虚構に摩り替えていたようだけど、あなたは違う。あなたは真実、最初からの人でな——」
鈴「ごちゃごちゃごちゃごちゃ——やっかましいのよォッ」
なにやら歩美以上の闇を抱えていそうなことが判明した鈴子。早くも彼女のルートに期待が高まる。
一方、四四八vs怪士。
四四八という極上の獲物を前にし、嬲り甚振る快感を寄越せと、壊れた武道家が力を解放していく。
“破段・顕象——”
“怪士面———黒式尉”
『黒式尉』とは能で使われる優しい爺さんの面のこと。しかし怪士の揮うそれは明らかに剣呑。
能力は「攻撃した箇所の老化」。
改めて怪士こと、曾禰玄心の背景。
代々続く武門の家系、曾禰家。そこに生を受けた玄心は殺人術を次々と修めるものの、与えられた「皇室の近衛」という立場上、戦場に出ることはなかった。その結果、最後まで表舞台に立つことも無かった。
幕末の京・西南戦争・日清、日露戦争と、動乱渦巻く時代の中、取り残されてしまったことが悔しくて仕方ない。
“生まれ落ちてより八十年、ただの一度も一人も殺せず、存分に業を振るったこともないまま衰えていくなどと”
“許せぬだろう。だから私に若さを寄越せ”
“たとえ巡り合わせの悪い運命(サダメ)であろうと、百年千年生き続ければきっと至福のときは訪れよう。そして無限に味わえよう”
望みを叶えるため、神祇省に降り狩摩の配下と成り下がる。
......しかし、肝心の狩摩が部下の願いを汲むような良い上司では無かったため、怪士の欲求不満は晴れぬまま(笑)。
そんなこんなでようやく訪れたこの機会、怪士のボルテージは最高。
“破段・顕象——”
“泥眼面———橋姫”
そこに被せてくる泥眼。
こちらの能力は「相手の動きの先読み+味方への共有」。
えげつない連携に、割って入った栄光が致命打をもらう!
——しかし、やはりこの戦いに懸ける思いが段違いだった栄光。
捨て身の特攻により、なんと狩摩の急段そのものに亀裂を!!
穴自体はすぐに塞がるも、歩美は誰がどの駒なのかを知ることができた。栄光ナイスファイト!
狩「最後っ屁にしちゃあえらく大掛かりなことをやられたが、まあええわい。こっちが甘かったっちゅうことじゃろう。なあ、泥眼よォ」
「頭ん中が読めるっちゅうのも考え物じゃの。愛(は)し姫......なるほど、似合いじゃわい。男が気になってしょうがないか。ええで許しちゃろう。可愛いんは正義じゃけえの」
「おまえはそれでええ。もともと神祇にゃあ関係ない身よ」
妬みからその名の通り橋の下で怨霊となり果てた鬼女、橋姫。
泥眼の正体に関してはユーザー側はなんとなく察せられるが、肝心の栄光が気づけてないのがことさら切ない......。
そんな泥眼の真実も次ルート以降。『戦神館』はまだまだ始まったばかり!
続き→相州戦神館學園 八命陣』歩美ルート第十話 感想・弐 - ゆらりゆらりとゆらゆらと