『相州戦神館學園 八命陣』晶ルート第九話 感想
“なぜ貴様らごときが俺より生きる?”
“それが羨ましいのだ。許せない”
聖十郎の狂気と戦う理由が明かされる第9話。
前話は恵理子、今回は剛蔵のモノローグから物語はスタート。
聖十郎と初めて出会ったとき、その危険性はすぐさま感じた。
印象は当然最悪で、それでも交流をもったのは恵理子のため。嫉妬から始まった関係は、しかし少しずつ変わっていく。
接していくうちに、聖十郎が常に何かを求めていることに気づく。そんなある日、彼から衝撃的な言葉が。
聖「俺はおまえが羨ましい」
突然その場に倒れる聖十郎。彼はいくつもの死病に冒されており、余命幾ばくも無い状況だった。
剛蔵は、そこでようやく聖十郎が求めていたものが健常な身体であったことを知る。
そのことをキッカケに芽生える同情と哀れみ......それこそが剛蔵の後悔。本当にしなければならなかったのは、友として対等に接することだったと——。
父からの手紙を読んだ晶、剛蔵と聖十郎が友人関係であったことに驚きつつ、何か聖十郎につながる手がかりはないかと家中を捜索。
すると見つけたのは、1冊の手記。
聖十郎により書かれたモノで、その内容は常軌を逸した闘病記。
通常医学ではどうすることもできない病の数々、外法に足を踏み出した聖十郎。その胸中は果てない怒り。
“ああ、どうしてこの世の者らはこうも役に立たぬのか”
“貴様ら、俺より遥かに生きられる身なのだろうが”
“呪わしい。苛立たしいぞ。俺に貴様らほどの時があれば、森羅の万象ごとき容易く掴み取ってみせるというのに”
成果が出せず行き詰まりそうになったとき、運命のいたずらか邯鄲法にたどり着く。
しかし、喜びもつかの間、戦真館で行われた試験的実験は見事に失敗。考案者の物部公泉は逝き、システムは失伝。聖十郎の望みは潰えたかにみえたが......その驚異の執念により、邯鄲法の真実に近づいていく。
“己の中を降りていくという邯鄲。その構図は階段にも似ていると言えるだろう”
“すなわち延々と下へ向かっていくことになる。ゆえにその最中には階層構造があり、これはどうやら当事者の人生に絡むものであるらしい”
“何回も、それこそ無限の閾値で繰り返されるシミュレーション。この連続により、世界の真実に触れられるまで精神を強化していく”
“すべての人間が無意識に望んでいる未来——それを幾通りも見せられ、経た経験から種族の意志というものを理解し、悟る”
導き出した邯鄲法の極意。信じられないことに一から邯鄲法の構築に成功する!!
次いで聖十郎が行ったのは、被験体の選別。
優秀なモルモットを必要としたのだが、これがまた難しかった。
結局聖十郎の期待に応えられる者は現れず......痺れを切らした彼は、自身の子種を使うことに。
傍にいた恵理子を妊娠させ、生まれてくる子どもに希望を託す。自らの救世主となるイェホーシュアとして。
後は子供が十分に育つまで、生き延びるだけ。
そこから何年たったか——ある男が聖十郎の下を来訪。聖十郎の目からしても、男は只者ではない出で立ち。
病魔に耐えるのも限界に近かった聖十郎は、即決で男を実験台に使うことに。
その結果は凄まじく、男はとんでもないスピードで邯鄲を攻略。
十周目を終えたころには、現実世界でも夢をいくらか行使できるレベルに。おかげで聖十郎の病気の進行も治まる。
実験は十分。満を持して、聖十郎は自ら夢界に潜り込むことに。
——しかし結果は、悲惨そのもの。というのも、聖十郎には盧生となる資格がなかった。
これまでの苦労が水泡に。憤死しかねない絶望に陥る中、邯鄲制覇に成功した男からある提案が。
“邯鄲法は基本的に一人で挑戦するものである”
“しかしこれには例外があり、その人物を媒介にして複数の人間を夢に繋げることも出来るらしい”
“言わば眷属。そこに盧生の許可があれば、夢の力を使う権利を得られるというのだ”
邯鄲を制したからこそ分かった新情報。時間がなかった聖十郎は、この提案に乗る。
そうして夢の力を手にし、さらには固有能力も入手。
“相手の最も優れたモノ(光)を奪い、自身の病魔(闇)を押し付ける”
今の四四八らの現状は、聖十郎の能力に依るものだったことが、ここで判明。
聖十郎は手にしたその力によって、男から盧生の資格を奪おうとするも、男相手では能力の必要条件を満たせず失敗。
やむを得ず、聖十郎は当初の予定通り息子の四四八を使うことに。
準備として、剛蔵・恵理子、さらには幽雫・花恵から輝きを奪う。
そして聖十郎は、四四八から資格を奪うタイミングについて熟考。
当然四四八が盧生となってから奪うのがセオリーだが、盧生の実力を考えると骨が折れる。
次の候補は第五層。五層はちょうど四四八が生まれた時期であるため四四八の魂は赤子同然。奪うことだけ考えればこれ以上ないチャンス。
八層で奪るか、五層で奪るか——聖十郎の命題であり、そのときこそが悲願成就の日。
——読み終えた晶。
想像絶する内容に激しい嫌悪感を抱くと同時に、おかしな点があることに着目。 聖十郎は現代人であるはずなのに明治、大正期の人間かのような記述。
この謎が明らかになるのは当分先。
手記から、晶はいまこの場所が現実世界でなく、第五層の真っただ中であることを推察。聖十郎が夢の力を使えたのも当然で、自分たちが使えなかったのは単に現実世界であると思い込んでいたから。
翌朝、晶は単身戦信館へ。
聖十郎から輝きを奪われ、ただの暴力装置と化した花恵と、いざ対峙!!
ヒーラーたる晶、攻撃能力は最弱クラスなためただでさえ苦戦は必至。
そんな中でも、花恵は容赦なく破段を発動。
“見し夢を獏の餌食と成すからに、心も晴れし曙の空”
“破段・顕象——夢合延寿袋大成”
元ネタは江戸中期に発行された占いの書物。
教室を覆う蜘蛛の糸誰をリスペクトしてるかは言うまでもないな。
効果は「与えたダメージがランダムで飛び火する」というギャンブル特化。
なお飛び火は本人も含まれており、公平性だけは保たれている。なので花恵より実力が劣っている晶からすれば、ある種千載一遇の好機ともいえるのだが......。
傷つくクラスメイトたちを放っておけないのが、晶の性格。血しぶき飛び交う教室にて、晶も吹っ切れる!
そうして至った選択は、傷ついた人間全員に治癒を飛ばす。
教室全面に夢を展開。どう考えても無茶なのだが、これこそが戦の真だと、晶に迷いは一遍もない。
花恵の破段と晶の回復が幾度も交錯。晶にもとんでもないダメージが飛ぶも、驚異の粘りで耐え抜く。
そうして——凶のクジはついに花恵にも。
戦闘は終了、花恵の最期......が、その余韻に浸る間もなく聖十郎が登場。
手記から聖十郎がどんな人物か知ってしまった晶は、聖十郎のことを心から恨むことはできず。それは父親をどれだけ侮辱されても変わらず。晶の優しさは父親譲り。
そんな彼女を障害だと認定する聖十郎。決着をつけさせてやると、後日決戦場所を八幡に指定。
といった具合で、晶ルートも次がラスト。
立ちはだかる壁が高すぎて、希望がまったく見えねえな......(;・∀・)
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