「Dies irae ~Amantes amentes~」神なる座に列し伝わる救世主 感想Ⅰ
“ああ、そうだな。これは最初から決まっていたことだ”
2018年10月18日。突如としてニンテンドースイッチにて発売された『Dies irae~Amantes amentes~』。
TVアニメに合わせた移植で、アニメから入った新規ファンを狙ったであろうことは明らか。
......が、
そのアニメがキツい出来であったため、新規どころかクラウドファンディングに出資した栄えある爪牙くらいしか観ていなかったであろうことも明らかでした。
そんな状況で発売を発表したスイッチ版Dies irae。
PC版を所持していたブログ主は「スルー余裕です(^^)」と呑気に構えておりました。
公式サイトを見るまではな!!!!
新規層が見込めないことを悟ってか、既存のファンたちを狙い撃ちしてきやがった!!!!
動きが緩慢だった『PANTHEON』が本格的に始動したことを察し、ブログ主としてはうれしくないわけがない。
しかし......納得できない部分があったのも確か。
てか何度目の発売だ!完全版商法はやめてくれ!!
既プレイ組は1本の新規ストーリーしかうまみがないし、新規購入層はその新規ストーリーが理解できない誰得仕様。本来『神咒神威神楽』につけるべきシナリオだろこれは!
......と、あーだこーだ文句を言いつつ、発売が近づくにつれ充実していったHP、カウントダウンボイスに我慢の限界。
呼吸するかの如く、自然にポチっていました(^p^)。
さてさて、そんなわけで追加された短編『神なる座に列し伝わる救世主』。
悔しいかな面白さは半端じゃない。
奇跡の復活を果たした水銀・黄金ペア。
再会が見れたことが何より嬉しい蓮とマリィ。
リキャストされてより凄みが増したマスター。
そして——本格的に登場を果たした無慙と真我。
さらには曙光メンツも巻き込んでの超大盤振る舞い。
至高の天はここにあり!!
コ「使命を持って生きることは、幸せなのか不幸せなのか」
「その答えは分からないけど、これだけは言える」
「僕の人生は僕のものだ。誰かに敷かれたレールの上を疑いなく走るような真似はしたくない」
開幕、朗々と語るコウハ。
このセリフだけで、彼女がどんな性格なのか一発で察せられる。正田卿のキャラ作りもさることながら、役者さんの演技にも舌を巻かざるをえない。
コウハはこれまでの座を、すべて“見てきた”と明かす。
それも、ひとりぼっちな深奥の場所で。
現段階で正体は一切不明だが、ただの人間じゃないことだけは確か。
話は、これまで座を獲ってきた神々について。
どいつもこいつも超ド級の厨二病患者たちで、世界を自分色に染め上げたのだから、あらためて凄まじい。
そんな彼らの歴史を見てきたコウハ。
彼女の目線で語られる神座譚。
ワクワクが尋常じゃないですよ神。
コウハが誕生したとき、世界は二つに分断されていた。
善と悪の闘争は100年や1000年どころの話ではなく、死者の数は夥しいものだった。
善側の特徴としては、とにかく危うい。
劣勢を強いられていたこともあって、個々の雰囲気は剣呑。勝利への飢えと渇きは野獣のごとく。善だからといって正義のヒーロー然としていた者はいなかった。
対して悪側は、華麗奔放。
あるがままに生き、あるがままに殺戮。カリスマ性すら備わっていた。
殺人姫・破滅工房といった悪の頂点たちが、大手を振って蹂躙。
......とまぁそんな目もあてられない時代において、コウハの胸を掴んだのは、一人の剣士。
無「死ね。死ね——呼吸をしていいと誰が言った」
( ゚д゚)
これが記念すべき無慙さま最初のセリフです
......orz。
コウハ曰く、無慙=マグサリオンは凄絶なまでに強かったとのこと。
セリフも見た目も悪役なのだが、困ったことに善側の中心人物の一人。
だが、胸に宿す殺意と怨念は他に比肩する者がおらず。
実力よりもまず想いの桁が並外れており、格上の強者を前にしても退くことは決してなかった。
そしてその渇望はついに天上へ届くほどに。剣片手に上りつめた冥府魔道。
歴代神座で、最も戦い、最も殺した男。『Dies irae』が始まるはるか昔に、こんなとんでもない奴がいたとはな......。
無「善ではない?ならば結構、俺は悪を喰らう悪となる」
開き直りにも似た宣言。しかしこれぞ彼。宇宙の法にも縛られない無慙無愧。
そんな存在を前に、黒白の世界を創造した神は嬉しそうにバトンを渡す。まるで討たれることを望んでいたかのように......。
そうしてバトルジャンキーが覇権を握った結果、生まれ出づる世界も無慙無愧。
その世界の生命は生まれながらにして“原罪”が埋め込まれ、だれもかれもが「汚物は消毒だぁーー!!」状態へ。
“力isジャスティス”の、弱肉強食を地でいく世の中の誕生。末期にいたってはサイボーグ、改造人間なんでもござれ\(^o^)/。
どいつもこいつもヒャッハーしてるためカオスはカオス......なのだが、凄惨な殺し合いを強制されていた前世界に比べればはるかにマシか。
お祭り騒ぎが常態な第二の世界。
なればこそか......そんなノリに馴染めないハズレた者も出てくる。
明「罪の浄化だ。私はそのために生きる」
Gユウスケ氏の手によってリファインされた、ネロス・サタナイル。
声優さんも変更され、無慙同様戦神館から輸入されてきた形に。まったく正反対のキャラを見事演じられて、役者さんってのは本当おそろしい。
声音は単調だが、内に秘めた激情は無慙に負けず劣らず。
サタナイルが抱えた原罪は“傲慢”。
その罪に恥じぬ不遜さで、現世界を覆う神をアホ呼ばわり。
アホに治世なんぞ期待できねえと、座から引きずりおろすべく行動開始。タイプは違えど、無慙無愧の精神を、その実誰よりも受け継いでいた。
原罪を持たない“天使”たちを創造し、これを以て王冠へと至る。
怨敵とされた無慙は、しかしサタナイルのこの進撃を快く歓迎する。
気持ち悪いくらい優しい声音で、己が継嗣と定めた者へ次代を託す。
無「穢れた世を正したいか。罪深い者どもを許せんか。すべての悪を浄滅し、善なる地平を希っているのだろう」
「俺と同じ理想を抱き、俺とは違う地平を築け。おまえだからこそ出来る、おまえだからこその楽園を」
殺し合いにおいて無敗を誇った無慙を、搦め手でもって撃破。
第一天から在り続けた、最後の悪が滅ぶ——。
そうして“明けの明星”となったサタナイルは、望み通り業罪のない世界を創り上げる。
「無知こそが諸悪の根源」と考えた彼。ここまでならまぁいろんな人が思いつくだろうが、明星のすごいところはその解決方法。
「他人同士だから“わからない”......じゃあ他人じゃなくなればいいじゃん!!!(^^)!」ということで、なんと人々から“個”を排除!(;゚Д゚)
彼我の境界がなくなったことで、人々の生き方は「共生」がデフォとなる。
しかし......なんともとんでもない平和の構築の仕方だ...。後にも先にもサタナイルにしかできない所行よな。
実際出来上がった第三天は、コウハ曰く「天国という名のディストピア」。『PARADICE LOST』と対になってるのがおもしろい。
個性の排除は徹底しており、なんと性格や容姿までも統一させていたというのだからおそろしい。“我”が突き抜けていた波旬の宇宙も大概だが、こっちも突き抜けすぎてて嫌だ。
そんな明星は智謀に長けていたため、世界の管理についても抜かりなし。
人々の群体化は、軋轢が生じぬよう徐々に徐々に。
反乱・蜂起といった懸念も、そもそもの個我がなくなれば心配する必要もない。
どこまでも完璧に仕上がっていて、それこそ『神』の名にふさわしかった。
......が、そんな完璧と思われていた世界も、突如として終わりを迎える......。
水「私に未知を見せてくれ」
「Ωewigkeit」を引っ提げて、あの男が憎たらしい笑顔で登場。
悲想天に、上記のとんでもない異物が発生。
原因は以下の通り
・明星が無慙討滅の際に行った時間逆行が、パラレルワールドを生み出すキッカケとなってしまった
・第三天はアップデートを繰り返しており、それはつまり「バグの発生を前提としている」ということ
・個我を失っていないのであれば、「知らないもの(未知)を寄越せ」と思うのは当然のこと
といった具合で、ミスともいえぬミスで別宇宙から変態星人襲来。
悲想天に抗う存在を前にし......明星は「敵対」ではなく「退場」を選ぶ。
それは無慙を否定したときと同じ。
つまり神がアホだからこんなことになったのだと、己自身を否定。
なんの感慨も抱かないまま、超新星爆発に呑まれていった——。
そうしてなんだかよくわからない奴が4つ目の世界を牛耳る。
彼の世界も明星同様人々を管理するタイプだったが、システマチックだった先代と違い、彼の宇宙は脚本を拵えた歌劇のごとく。
さてさて、パラレルからヒョイっと飛来してきた彼。出自が出自なため、己をとりまく時間軸がごっちゃ。
本来直線であるはずの時の流れは、円環へと。
結果として、無限ループの宇宙が誕生。何が最悪って、そんな法則を垂れ流してる自分自身も被害を被っているところ(´・ω・`)。
何度死んでも繰り返される生にもう飽き飽き。
水「殺してくれよマルグリット。壊してくれよハイドリヒ。君らに抱かれて逝きたいのだから」
女神と親友。さらには息子とその贄たちを巻き込んだ舞台は、しっちゃかめっちゃかすぎてもはや喜劇。
コウハの目から見ても彼がとんでもない脚本家であったことは違いなく、されども強く強く魅せられたのも確か。
その点に関しては、プレイした全爪牙も納得だろう
(゚∀゚)。
そうして——那由多の果てに、水銀は愛しき花へと座を明け渡す。
黄「わたしがすべてを抱きしめるよ」
マリィの手は受け入れることにこそ全てを注ぎこんでおり、排斥の意志など欠片もない。
その結果は如実で、黄昏となった彼女の知世には、第四天で生きた人々がALL続投!
ラスボスであったラインハルトすら例外でなく。
器がでかいとかって話じゃない、この黄昏の在り方にコウハも感化。
大きな目で見れば、黄昏はコウハすら抱きしめていたことになるな......。
第五天は、前神たちとは違い完全放逐型の世。
人々は人生を自分の手で切り拓かなきゃいけない、しかしそれこそ人として正しい姿ではなかろうか。
さらに黄昏の法則は、来世をより良くさせるお墨付きがある。不幸な生涯が繰り返されるなんてことは起こりえない。......やっぱとんでもねえな!!
“覇道神の共存”という歴代の誰もが成しえなかったこともやってのけてしまう。
これら奇跡を前にして、コウハは初めて自分が独りであることに寂しさを覚える。
ならばせめてと、この暖かな光が永劫続くことを願っていたのだが——
波「ある日、ふと気づいたときから不快だった」
「誰だ貴様。塵が俺に触っている」
邪神降臨。
ヤンキー座りでメンチ切ってるのがいやに様になってるなこの野郎。
「波旬・大欲界天狗道」が相変わらず物々しいぜ。
生き方を束縛しない輪廻転生は、「じゃあ何しても許されるんだよね?」と考える馬鹿を生み出してしまうことに。
不幸自慢しかできないそんな馬鹿どもが集まった結果、邪宗門としていつのまにか一大勢力となっていた。
こいつらのすごいところは、黄昏どころか座の機構そのものを破壊しようと目論んでいたこと。
『私は今を生きている。今ここにいる我々こそが、天地のすべてだ』
『来世など知らんし、興味もない。私は今こそ幸せを得るために、持てる全霊を振り絞るのだ。否定はさせん』
『それが生きるということだろう!』
おまえらがやってんのは単なる八つ当たりだろ。人生うまくいってないからって神様に当たってんじゃねえよ恥ずかしくないのか。
大導師たちの企みは、波旬の完成をもって一応の成功となる。
波旬自身は母たる彼女らのことなど眼中になかったため、“転輪王の花嫁”は黄昏諸共消滅。
ざまぁみろ......とは素直に喜べない。なにせここからが本当の地獄。
波旬の法則は滅尽滅相。
全宇宙の生命がただ殺し合う、後に残るのは波旬のみ。第一天をはるか上回る血みどろのルール。
コウハすら例外でない。
そんな終末の光が、世界を覆うまさにその瞬間——
刹「他は何も見えない。聞こえない。ただ忘れないだけだ、俺は彼女を愛している」
「来いよ波旬——俺はまだ立っている!」
黄昏を愛し愛されていた男の覚悟。
奪われたまま終わらない......次代を守るため、血涙を流しながらも邪神に抗った。
その結末は『神咒神威神楽』で語られた通り。
そして現在——7つ目の法則が世界を覆っている。
ここで一旦区切ります。
満を持して歴代の法則と世界観がお披露目されたわけですが......どれも碌なもんじゃねえな!!!
第六が最下位なのは間違いないが、次点争いが激しすぎる。
黄昏と曙光以外ひどいなんてもんじゃねえぞ......。
しっかしこれら全ての世界で一つ一つ壮大なドラマがあると思うと、正田卿の脳内はあらためてとんでもないことになってるな(さすが14歳神)。
続き→「Dies irae ~Amantes amentes~」神なる座に列し伝わる救世主 感想Ⅱ - ゆらりゆらりとゆらゆらと