“これからも第七天の輝きは総ての命を導こう。数多の意思を慈しむ八百万の空として”
神咒神威神楽の後日談。
正田卿が描く、完全無欠のハッピーエンドがここに。
視点は曙光曼荼羅の一部となった、かつての畸形脳腫くん。
願いのすべてが叶い、あらためて大役を担ってくれた覇吐へ感謝。
感謝の念は、覇吐だけにとどまらず。
世界を滅亡から守ってくれた英雄たちの存在を忘れるわけがなく。返しきれない大恩に報いたいと、その祈りが座を包む。
そんな“彼”の意志を受け取った覇吐。
咲耶もそろったことなので、みんなで下界の様子を見にいきまっしょいと提案。
長生きしていた咲耶だが、俗世から離れていた生活を送っていたために、彼女も興味津々。
問題としては、ただの人である凶月兄妹が「現世へ降りる」という超常なことができるのか?ということだったが、そこは死後を司る閻魔様夜行様がいらっしゃるのでクリア。
この第七天はマジで夜行様ありきの世界ですはい。
ということでいざ現代へ。
降りる場所はみんなが暗黙の了解で一致。
降り立った地は、諏訪原の月学。
穢土の地では廃墟だったこの場所も、すっかり元の学び舎として復活。Diesファンとしてもなんとも感慨深い......だが大事なのはそこじゃない!!!!
......ジーザス。
ただの衣装チェンジじゃなく、立ち絵そのものが新規くさい。なんてこった。
我々爪牙の魂の喜びを、覇吐が代弁してくれる。
覇「ああ、もどかしい。歌いあげたい、詩に書き留めたい、本へと綴り後世へ伝えたい、希うぜ留めたいほど」
水銀が蓮と司狼のケンカを見たセリフのオマージュですね(笑)。
現代のファッションに大いに満足なされる性欲界紳士道の徒。「水着」なんてものを見たら発狂してしまうのでは。
あとは各人、目にしておきたい場所へ散り散り。
まぁただの現代デートである。
・飽いていればいい、飢えていればいい
刑士郎らが訪れたのは遊園地。
穢土では荒れた薔薇園であったここも、すっかり元の姿へ。
人々を喜ばせるアトラクション、楽しませるスタッフたち。
笑顔であふれており、天狗道ではありえなかった光景にあの刑士郎すら笑顔を見せる。
咲「まずは自己を然りと見つめ、他者と言葉を交わし合い、分かち合い、励まし合い、時にはぶつかり合いながらも誰かと共に日々を歩んで......」
「人の道を八百万は包んでおります。抱いた想いがたとえ嫌悪や嫉妬であろうとも、無関心であることだけはございません」
「繋がり」を何よりも重んじているのが、曙光の理。天狗が異端すぎたってのもあるが、それでもやはり暖かさを感じるステキな法則ですね。
さて、咲耶の口から語られる血染花編のその後。
座の代替わりを人の身で感じ取った彼女は、当初の山越えを止め、里に残留することに。
冷泉の追手が来ることはなかったものの、凶月一族は滅んでしまったために、彼女は一人で子どもを育てていった。凄すぎる......!
月日が経つと玖錠・御門・坂上ら逆賊として扱われた面々が里に集結。
彼らの尽力もあって里は復興。
曙光の法則のおかげか......第二の化外とされた彼らも、最終的には世界から除け者ではなくなった。
女で一つで偉業を成した咲耶。境遇が『Omnia vincit Amor』の香純といっしょ。やっぱ“人間”が一番強えーんだな(;'∀')
そんな咲耶へ刑士郎は負い目。
ユーザー目線でみればあの場で力尽きてしまったことはどうしようもなかったにせよ、刑士郎的には違う。申し訳ない気持ちは大きい。
そんな渋面な兄貴へ、咲耶から爆弾発言!!
咲「大丈夫ですよ、確かに兄様が健在なら頼もしかったと思いますが......そこは良くしたものでして」
「わたくしたち親子には、すぐ頼りになる殿方が現れてくださいましたから」
刑士郎の精神崩壊のお知らせ。
刑「へ、へぇぇ......そいつぁ、どんな男だよ」
咲「玖錠澳継——紫織様の弟君にして」
「わたくしと兄様にとっては、義理の息子にあたる方でございます」
よかったな刑士郎(笑)。
となると刑士郎は紫織の義弟になるのだが、紫織はそのこと知ってるのだろうか......?
とにもかくにも刑士郎のジメジメした後悔はここで終了。
そんな中、響き渡るどこか懐かしい声が——
そこには滑稽な負けヒロインの姿が!!
第四天時から負け続けてきた悲しき地星、第七天でも負けが決まってしまったっぽい......蓮てめえちょっと表でろや。
蓮の結婚を認められず式をバックレようと絶賛バイトに精を出すアンナさん。
悔しいと素直に口に言えるだけまだ幸せか。
そもそも彼女の本質は、どこにでもいる明るい少女。
『魔女狩り』と『水銀』というよっぽどの要素がない限り、彼女はこれからも泥に負けない強さを持って生きていくはず。
そんな彼女をからかい(連れ戻し)に来ているのは、おなじみ我らが悪童。
香純と手紙のやりとりをしていた咲耶は、眼前の事態を一瞬で把握。
込み上げてくる嬉しさを隠せず。
司狼の立ち位置は、何度転生しても変わらず。
皮肉や軽口を吐きつつも、心根では身内を誰よりも大事に考えている。面倒事だって進んで引き受ける。
変わらない在り方に、たまらず苦笑してしまう刑士郎。
いつの間にか始まる雑談。
相変わらず蓮や周囲のサポートに奔走してる司狼。
アンナのやりきれない心情をしっかり理解しており、なんだかんだ彼女のはけ口になってあげている。
そんな彼自身もどうやら結婚を控えているらしい。十中八九エリーだよな。ナラカ因子もないようで安心。玩具の宿命から解放されたようで本当によかった。
バイトと客、一時の邂逅はサラッと終わりを迎える。
なんの気なしに別れる刹那、刑士郎は過日受けた恩を返す。
あの日、伝えられなかったことを——
刑「——真面目だな、おまえさんは」
飄々と生きているようにみえて、その実誰よりも生きることに誠実。
誰に強要されるでもなく苦労を背負い込んで、不平不満は口にしない。摩訶不思議な神通力にも、神の恵みにも頼らない、ありふれた1人の人間として地に足つけている。
今まで誰からも言われたことがなかった真実に——司狼も腹の底から痛快に大笑。
まるで誰かに言ってほしかったように。
嬉しさと気恥ずかしさがないまぜに、「また会おう」と刑士郎へ。
蓮のような腐れ縁になるのか、はたまた相容れない敵手となるのか......人として生きる両者は曙光の空の下再会する未来を夢みる――。
・我ら二柱、武神として雄々しく在ろう。あなた達の生きる世を如何な邪神にも穢させない、この身を懸けて守り抜くと誓いを立てる
宗次郎らが訪れたのは公園。
首切り事件の現場かつ蓮のデビュー戦でもあった場所なので、前作プレイ組としてはなんとも印象深いですね。
さて、宗次郎らとしては別に因縁深い場所でも何でもないのだが、立ち寄った理由としては自動車・テレビ・カメラといった100年の時代の進みをフルスイングで浴びた宗次郎の一休みのため。
実際疲れるのも無理ない話よな。100年どころか20年でも、技術の進歩って信じられないし。
さらにこの第七天は“絆”を主とした世界のため、技術革新もこれまでの世界の比ではない模様。
気疲れしている宗次郎とは対照的に、紫織は余裕綽々。
それもそのはず、益荒男たちの中で彼女だけは下界に度々降りていた。
家柄もあってか、先端技術に対する興味と理解がダントツ。
さらに日本だけに留まらず世界中周っているらしく、そのバイタリティも実に紫織らしいですね。
そんな彼女の喜々としたまなざしに、宗次郎も感化されていく。
高め合うという関係性は相も変わらず。紫織との海外デートが今後の夢に。
と、そんなほのぼのした空気の中突如として現れる既視感バリバリの幼女が!!
てかこいついつも泣いてんな(笑)。
明らか迷子であり、秒で決壊する涙。
宗次郎が狼狽えるのは予想通りだが、紫織までてんやわんやするのは意外や意外。弟の扱いには慣れてるものの、か弱い幼女に対しては目を丸くすることしかできない(笑)。
「涙を斬るorゲンコツ」という解決策しか見いだせない両者。こんなんが世界を管理する側でいいのか......?
2人して泡食って言い合ってると、いつのまにか泣き止んでいる螢ちゃん。
まるで兄と姉をみているようだと、笑顔に花咲く。
些細なケンカや押し問答も、すべては明日を笑うため。そんな少女の何気ない言葉は、2人の胸を静かに打つ。
すると、現れる一組のカップル。
宗次郎と紫織の運命を決定づけた、かつての戦神の真実がここに——
不意に訪れた望外の奇跡に、宗次郎たちの胸には感謝と感動が押し寄せる。
戦乙女と屍兵。そんな面影も歴史も、時の流れとともに泡沫へ。
——だけど、彼らの輝きだけは永久不変。その証拠こそ、今目の前に。
幼女は泣いたり笑ったり表情がコロコロコロコロ。紫織でなくとも、このまま育ってほしいと思いますよええ。
保護者2人は幼馴染で半同棲というふざけてんのか死ね設定。
お姉さんはしっかりしてるようで、家事全般をイケメンにぶん投げてる模様。
まぁこのイケメン、別時間軸ではヘルパーこなしてるほど万能だからね......。
ただそこらへんは紫織から苦言。女としての教授を、トゲなくやんわり伝える。
対して困った顔で返す彼女。かつてとは違う微笑ましいやりとりに、胸が暖かくなるよ;つД`)。
そんな彼女を見守るイケメン。どんな時代になっても、戒の魂は「守る」ことに特化。
かつての敵であり、師であり、恩人である彼へ、宗次郎なりに恩返し。
彼へ説く。「女性はただ守られるだけの存在ではない」ということを。
それは、たとえば紫織のように。自分の背中ではなく、隣に並び立つ関係性。
宗次郎が見つけた、宗次郎の絆の形。
その意見に青年は鷹揚にうなずく、それもまた至高の宝石だと。他者の考え方を否定なんて、兄さんがするはずもないわな(*'▽')。
そして姉も少女も、宗次郎の意見にこそ同感。守られるだけなんてまっぴらごめんと、こちらも在りしの輝きは失ってない。そうさ、灯のように道を照らしてきたことを、我々全爪牙が知っているんだ!
仲良し家族はこれから知人の結婚式へ。
姉「この子のこと、本当にありがとうございました。面白い話もできましたし、あなた達とはなぜか初めて会った気がしませんから」
「......願わくばどこかで、また会えるといいですね」
宗「いえ、こちらこそ——」
紫「ありがとう。私たちも、会えてよかった」
新世界を守る理由を、再確認できた二柱。
武の神である彼らは、この曙光を何者にも侵させないと誓う——。
曙光勢と黄昏勢。
本編内では一方的な関係で終わった各組合わせだったが、新世界の到来に伴い、ようやくわだかまりのない間柄になってくれて本当よかった。
あらためて伝えたかった本音を言えたことは、益荒男たちにとっても幸せなことであったろうし、この後日談は蛇足でも何でもない本当に必要なモノでしたね。
続き→『神咒神威神楽 曙之光』曙之光 感想・下 - ゆらりゆらりとゆらゆらと