ゆらりゆらりとゆらゆらと

あたまの悪い男が、起こったことを忘れないためのボケ防止日記

「神咒神威神楽 曙之光」霜月・無間蝦夷 感想・肆

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“私たち、これで終わりじゃないよね、藤井君”

 

ついに夜刀に出番がまわってくる。

その背景にある先輩の失恋が、こちらの心を深く抉ってくる。

 

 

 

 

夜都賀波岐の戦神たちが、次々と散っていく。

その事実に、主神たる夜刀が絶叫する。

穢土を“楽園”と呼んでくれた櫻井兄妹、ベアトリス。

「あいつの意志は俺の意志」、そう言ってくれた司狼、ミハエル。

大事な仲間たちの気持ちを噛みしめ、血涙が止まらない。

 

その想いを汲むように、常世が立つ。

同胞のため、自分のため、そして何より......

常「君を負けたままにだなんて———させない」

流れ出す「我魂為君」。「誰が為 散るのか」というフレーズが、常世の心境とシンクロしすぎている。

もはや新世界などどうでもいいと、最後のカードを切りにいく。

“生存競争?今や邪魔だと?何も知らぬ分際でよくも言った”

“おまえたちなど、彼がいなければとうに奴からすり潰されていたくせに”

“しょせん彼のお陰で在れた命。ならば彼の名誉のために食い尽くされても受け入れろ。文句などは言わせない”

 

“勝つ———自分の愛する男は必ず勝つ”

 

吐露する心境がひたすらに強く辛い。

もはや何もかも一顧だにしない、正田卿の作品でここまで固い決意をしたキャラが果たしていたかどうか......。

......っていうかね、ここまできたらユーザーだって「もういい先輩、思いっきりやっちまえ!!」と思わずにはいられないでしょ?

だってブログ主が思ってんだもん!!!

 

狂乱している夜刀へずっと胸に秘めていた想いを伝え、太極を展開。

その瞬間、夜刀から「ありがとう」の一言。

思いもよらなかった返事にわずかな羞恥心と、それをはるか上回る幸福に包まれ、全ての葛藤や迷いも晴れる。

無理やり行使された第四天時とは違い、はっきりと自らの意志で発現させるゾーネンキントの力。

その詠唱に懸ける思いは、比べるまでもない。

生天目さんの力演が熱い。

 

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“蘇る そう あなたはよみがえる 私の塵は短い安らぎの中を漂い あなたの望みし永遠の命がやってくる”

“種蒔かれしあなたの命が 再びここに花を咲かせる 刈り入れる者が歩きまわり 我ら死者の欠片たちを拾い集める”

“おお 信ぜよ我が心 おお信ぜよ 失うものは何もない”

“私のもの それは私が望んだもの 私のもの それは私が愛し戦ってきたものなのだ”

“おお 信ぜよ あなたは徒に生まれてきたのではないのだと ただ徒に生を貪り 苦しんだのではないのだと”

“生まれて来たものは 滅びねばならない”

“滅び去ったものは よみがえらねばならない”

“震えおののくのをやめよ 生きるため 汝自身を用意せよ”

“おお苦しみよ 汝は総てに滲み通る”

“おお 死よ 総ての征服者であった汝から 今こそ私は逃れ出る”

 

——太・極——

“随神相——神咒神威・無間衆合”

 Heilige Arche——Goldene Eihwaz Swastika

 

その属性は“出産”。

成される効果は、完全なる新生。

 

 

再臨する常世の随神相、そして頂上には神の通り道となる三つ柱の鳥居も出現。

何が起こるか察知した竜胆と覇吐、鳥居まで駆け抜ける。

これが最後ということもあって、竜胆はあらためてこれまでの礼を。

自分だけが持っていた“狂気”と言われる魂——それに呼応してくれたことが嬉しく、間違っていなかったのだと胸を張れる。

竜胆の衒いのない告白に、いつになく照れる覇吐が珍しい。

しかしそんな彼も自身の思いを堂々と伝える。

覇「言ったろ。あんたのために俺は死ぬって」

 「東征軍総大将、久雅竜胆鈴鹿はとびきりいかしたいい女でよ。そんな将に俺たち全員、まとめて抱かれて骨抜きなのさ」

 

 「愛してるぜ」

 

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愛・友情・絆......これまで無かった様々な感情を与えてくれた竜胆に心から感謝。

そして、だからこそ先人たちにも分かってほしいと願い、いざ最後の舞台へ。

 

 

無間衆合地獄内へ突入した竜胆。

警戒していたものの、発動は既に終わっているためがらんどう。

竜胆からしてみれば、敵とはいえ常世は最大の尊敬相手。空虚となった太極内を見て、彼女の死期を悟り惜しむ。

遣る瀬無い思いを抱えていると、現れる常世。敵愾心を一切隠さず。これが最後のやり取り。

 

竜胆は、常世含めた天魔たちが憎悪の底で願っていた真意が“救済”と“祈り”であることを確信。

取り付く島もない常世だったが、自身がここで消滅することを明かす。

しかし、それは敗北宣言にあらず。

先にあるのは、想い人の勝利。

 

常「彼の真実はとても尊い。狂わなければ守れないから、あえてそうしただけなのよ。その魂がどれだけ強く、無謬の輝きを持っていたかを知りなさい」 

 「彼は強い。彼は強い。彼は強い。彼は強いの——本当の太極が、座に挑めるほどの力というのがどういうものか教えてあげる」

 「かつての彼が、在りし日のまま新生したなら、きっと私たちの勝利を掴んでくれると信じているから——

 

“最後に勝つのは自分たち”......夜都賀波岐はみんな想いが一途すぎて泣けてくる。

 

言いたいことを言いつくした常世

翻って、まだまだ話したいことがある竜胆。これが最後なら、なおさら退けない。

なぜ自分だけ東側と同じ気持ちを抱えて生きているのか、その真相に辿りつけたときこそ、自分たちは輝く未来を掴みとることができると信じている。

......しかし常世はそれを即座に否定。

そんな未来はあり得ないと、竜胆が深奥で抱いている想いを看破。

 

常「本当は殺したいと思っているくせに」

 

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これまでそんな素振りを一度もみせてこなかっただけに、この一言にはえらいド肝を抜かされたもんです。  

まずユーザー視点から見て、竜胆の在り方は天狗道世界では明らかに異端。従って『Dies irae』で登場した神殺しの存在“自滅因子”ではないか、という推測が立つ。実際Dies既プレイ組ならば、初見時で誰もがそう思ったはずだ。 

しかし、常世はそんなユーザー側の考えをここでバッサリ。

なぜなら極度の唯我論者である当代の神が“自死”なんて気持ちを抱くはずもない。よって“自滅因子”という存在も生まれ得ない。

じゃあ竜胆って何なんだよっ!ってこっちが困惑する中で、常世先輩は一つの仮説を推測。

 

“波旬には畸形嚢腫がある”

 

「畸形」というキーワード......ブラックジャックピノコで有名でしょうが、正直ブログ主は神咒をプレイするまで知らない単語でした。

 

news.nicovideo.jp

 

 

なんと申しましょうか......本当人間の身体って不思議なものですよね......。

 

 

仲間たち、特に覇吐へ対する深い殺害欲求があることを指摘され、さすがにダンマリしてしまう竜胆。

常世はトドメを刺すように、その未来が必ず訪れることを告げる。

 

消沈してしまったものの、言われっぱなしでは終われない。

竜胆は常世の太極がいかなるものなのかを察しており、夜刀はこうなることを望んでいたのか?とチクリ。

真に尊いと呼ばれた男が、仲間の犠牲の上に起つなんて思うはずもない。......その上で常世が至った苦渋の選択に想いを馳せる。

そして———

 

竜「波旬、と言ったな。御身らが絶対の敵と認識しているその存在......我らは共に、それと戦うことは出来ないのか?

 

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いや本当に待ってたよ。なんなら東征始まる前、いや発売前から聞きたかったその言葉。

全ユーザーが祈っていた最高の提案......しかし先輩は一蹴。

たとえ共闘して波旬を倒すことに成功したとしても、その後“座”に座れるのは一人のみ。どの道待ってるのは潰し合い。

 

と、ここに至るまでずっと気丈に振舞っていた常世だったが、最期の時が近づいてきたからか、心の奥にしまっていた本当の気持ちを。

 

常「私、私は......だけどほんとは、ずっとこの黄昏の残影に篭り続けたいと思っていた」

 「壊れていたって、ずっと彼と居続けたいと思っていた」

 「あなた達が、来るから......あなた達が、いじめるから......もうこうするしか、なくなって......」

 

宿儺らとは違い、「現状の維持」こそが常世が望んだ形。

千切れちぎれに零すその心情、誰が否定なんてできようか。

 

その悲痛な声にもならない叫びを聞き、だからこそ同情などしてはならないと、竜胆は一つの決意を口にする。

“夜刀を踏破し、新世界を創造する”

黄昏に比べてなんともおぞましい現世界を払拭し、先達たちに胸を張れる明日を創る。

その宣戦布告......何も期待してないと言い続けてきた常世にも確かに響いたのか、最後にポツリと——。

 

玲「お願い」

 

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 「どうか、あなた達が波旬を斃して」

 

片思いが報われることはなく、それでも一途に想い続けた少女の物語が終わる。

 

 

そして、血涙は止む。

 

“海は幅広く無限に広がって流れ出すもの 水底の輝きこそ永久不変”

“永劫たる星の速さと共に 今こそ疾走して駆け抜けよう”

“どうか聞き届けてほしい 世界は穏やかに安らげる日々を願っている”

“自由な民と自由な世界で どうかこの瞬間に言わせてほしい”

“時よ止まれ 君は誰よりも美しいから”

“永遠の君に願う 俺を高みへと導いてくれ”

 

——太・極——

 ——Atziluth——

“随神相——神咒神威・無間大紅蓮”

 Res novae——Also sprach Zarathustra

 

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外套から鎧へ身を纏い、在りし日の刹那降臨。

随神相はこれまでの夜都賀波岐たちに比べ過去最大規模。東日本を覆うほどの巨大蛇。

さらに軍勢変生で太極位階に押し上げた彼らとは違い、夜刀は純正の覇道神。従ってその基礎スペックは比にあらず。

解脱した刑士郎、真に太極に達した夜行すら飲み込み、東征軍全てを完全停止させる。

 

そのビジュアル、三つ巴ルート時を踏襲しつつ(先出はこちらだが)、あの時の青臭さはゼロ。

老成された顔つきと、それに見合った厳粛な声。

まさに完成された神の姿。

ギロチンを想起させる背中の刃が最高にかっこいい。

 

波旬とのせめぎ合いにより消耗した力が、常世の太極によって全快。特異点への潜行がさらに加速。

ここで明かされる現神の座の深さ。今日に至るまでずっと潜り続けていたにもかかわらず未だ到達できていない。その時間なんと数千年。

波旬がどれだけヒッキーなのかをよく示している......てかほんとに化け物だな。

が、そのゴールは目前と感じる夜刀。

仲間たちの選択を尊び、加減なく全開で太極を行使。

全てが止まった時の中で、しかし夜刀は呼びかける。

 

夜「来いよ、波旬の畸形嚢腫。あまり不甲斐ないと俺が座を握ってしまうぞ」

 「魅せろ新鋭——主役を気取りたいんだろうが!

 「その何たるか、先人(おれ)が教えてやるから掛かって来い!

 

ぎぃいやあぁぁぁぁああ かっこよすぎぃぃぃぃいいい!!!!

 

あっ............フぅ。 

 

ってかBGMの「刹那・無間大紅蓮地獄」が仕事しすぎである。

正田・G・与猶啓至が総出でおれを殺しにかかってる。 

 

 

挑発を受け、応えるように時間停止を引きちぎる覇吐。

覇道神でもない者が、夜刀の太極に抗うなんて本来到底あり得ない事態。

主人公補正なんかじゃとても説明できないことが起こっているのだが......覇吐はひとまず棚上げ。 今は目の前の難敵に専念すべきと意識を集中。

過去最大の相手を前に、主役を気取るべく、一世一代の大名乗りを!

 

覇「神州東征軍総大将・久雅竜胆が臣、坂上覇吐———!」

 「穢土・夜都賀波岐の将——天魔・夜刀に相違ねえなら」

 

 「いざ尋常に、勝負しようかァッ!」

 

 

 

人物雑感

常世

電波先輩ことテレジア。今作ではそんな余裕もなかったため終始まとも。

前作では“メメントモリ”のせいで覚醒するのがだいぶ遅かったが、今回の先輩は最初からクライマックス。首領代行としてがんばった。さすがは黄金と神父の娘。

イザークもいるにはいたんだけど、作者にも忘れられるほどの影の薄さ。がんばれイザーク

マリィルートの延長線ということもあり、負けヒロインというレッテルは張り付いたままかと思いきや......。

 

 

俺の女神に捧げる愛だッ!→「神咒神威神楽 曙之光」霜月・無間蝦夷 感想・伍 - ゆらりゆらりとゆらゆらと

 

 

 

 

出典元:www.light.gr.jp