“ジーク、ハイル......ヴィクトーリア......”
東外流の戦闘後半戦。
矢口アサミさんの熱演が凄まじすぎて、全爪牙の胸が焼かれたであろう最愛の章。
覇吐が何者なのか察した奴奈比売、本気モードに。
太極発動の兆しをいち早く感じた咲耶は、しかし防ぐ手立てがないことに歯噛み。
自身の無力さを恨んでいると、語りかけてくるのは二童子。
用件は“歪みを使え”。不破之関の再現を提案。
状況を打開するにはそれしかなく、丁禮たちもまた、龍明同様ここで諸々の清算を望む。
———しかし、咲耶はその提案を拒否。
咲耶にとって二童子らも家族同然。犠牲になどできない、掛け替えのない絆なのだと。
ヘルガにはなく、また、天狗道においても存在しないであろう感情。
咲耶も確実に変わりつつある......(胸熱)。
そんな咲耶の告白に、「馬鹿な女だ」と零す丁禮。
しかしその表情は......。
丁「お許しください、夜行様。私はこの愚かな女を、救ってやりたいと思います」
「いえ、むしろそうすることで、私が救われたいと思うのです」
あかん、もう泣きそう......。
童子たちの意を汲む夜行。
別れを感じつつも、相変わらず不遜な態度。
だがそれは同時に彼らの背中を押すようにも感じる。そんな優し気な声。
そして、今度は自分たちの意思で、式神は最速の獣に還る。
“ああ わたしは願う どうか遠くへ 死神よどうか遠くへ行ってほしい”
“わたしはまだ老いていない 生に溢れているのだから どうかお願い 触らないで”
“美しく繊細な者よ 恐れることはない 手を伸ばせ”
“我は汝の友であり 奪うために来たのではないのだから”
“ああ 恐れるな怖がるな 誰も汝を傷つけない”
“我が腕の中で愛しい者よ 永劫安らかに眠るがいい”
“神咒神威——修羅曼荼羅・豺狼”
Niflheimr Fenriswolf
顕現した凶獣。
「触れないで、でも抱きしめて」という二律背反した渇望はそのままに。
流れるBGMが“覇ヲ吐ク益荒男”なのもいい。すごくいい!
禍々しかった“凶獣変生”の印象は、ここに完全に払拭されたぞ!!
爾子・丁禮は奴奈比売へ吶喊。
その様子を見た母禮は急いで踵を返すも、童子たちの主がそれを許さない。
夜「思うところあるなら好きに踊れ。たとえこれが永の別れになろうとも、私は止めん。顧みん」
「おまえたちの主である摩多羅夜行は、そんな男であるということ、重々承知しているだろう?」
胸が震えるような絆じゃねえか......!
船上では龍明vs紅葉。
屍兵たちを次々と灰燼に帰すその力はさすが。
しかし身体は天狗世界に弾かれまくってボロボロ。
それでも彼女は前へ——。
その胸中はこれまでの回顧。
300年前西へ渡り最初の東征を促し、結果東の理の一部である“陰気”を西へ流入させることに成功。波旬を討つ足掛かりに。
しかしそれは同時に多くの犠牲を生み、また、“凶月”という爪弾きものを出してしまうことにもなった。
そのことを詫びながらも、しかし後悔はしていない。
なぜなら龍明の胸の内は、今も昔も変わらず一つ。
“勝つために。我らの誇りを見せるために。波旬を倒すために残ったのだ。だから私がここにいる”
“潔さをはき違えた敗残者になどなった覚えは一度もない。私は変わらぬ、今もこの時も目指し続ける、勝利を求めて足掻くのだ”
忠誠も志も変わらず。
そして今はさらに、その背を押す愛し子もいるから———。
“彼ほど真実に誓いを守った者はなく 彼ほど誠実に契約を守った者もなく 彼ほど純粋に人を愛した者はいない”
“だが彼ほど総ての誓いと総ての契約 総ての愛を裏切った者もまたいない”
“汝ら それが理解できるか”
“我を焦がすこの炎が 総ての穢れと総ての不浄を祓い清める”
“祓いを及ぼし 穢れを流し 溶かし解放して尊きものへ 至高の黄金として輝かせよう”
“すでに神々の黄昏が始まったゆえに”
“我はこの荘厳なるヴァルハラを燃やし尽くす者となる”
“神咒神威——修羅曼荼羅・大焼炙”
Muspellzheimr Lævateinn
屍兵の群れを突破し、かつて共に青春を駆け抜けた目の前の馬鹿娘へ、とっておきの一発を———。
龍「貴様、いつまで死体を抱いている」
「失くしたものは戻らない、彼はそれを誰よりも知っているからこそ、刹那を愛したのではなかったか」
「その煌きを、燃焼を、疾走したからこそ光と仰いだ。それはすなわち、未来を信じていたからに他ならん」
刹那が抱いていた想いを、まさかエレオノーレが代弁する日がこようとは......。
それも的確かつ誰よりも正しき認識で......。
龍「邪神の理、おぞましい。自らそう弾劾し、器ではないと封じていたこの太極を、彼が憎悪の泥を纏ってまで展開したのは何のためだ」
「その先を願い、前を見ていたからだろう!この泥濘(ぞうお)の果てにも花は咲くと、信じていたからではないというのか!」
「それを貴様ら、そろいもそろって彼の憎悪(あい)に甘えよって!それが貴様らの報恩か!これが貴様らの絆なのか!」
「笑わせるなよ甘ったれども!真に愛するなら壊せ!」
「彼もそれを望んでいる。そしてこれは、我が君の遺命である!」
夜刀が忌んでいた凍結地獄を展開したのは、波旬への憎しみからだけではない。それ以上に大切な願いを胸に込めている。
なぜそんなことも分からないのだと、ここに集った全ての天魔たちを糾弾。
夜刀を存続させることに尽力していることが許せない。それでは夜刀が報われない、と。
そんな夜刀の真意、紅葉も気づいていないわけではなかった。
紅葉も龍明と同様、夜刀との繋がりが薄く、かつ聡明な人だから分かっていたのだろう。
もしかしたら、龍明のように西に渡っていた可能性だってあったかもしれない。
それでも今まで穢土にいたのは、ひとえに娘のため。
第四天では香純の命を優先するような発言をしてしまった彼女。今世で常世にすべてを捧げようと思うのもムリないよ......。
常世の意識が窮地の母の方へ向く——その間隙に、竜胆が常世たちの真実を射抜く。
竜「聖槍十三騎士団黒円卓に連なる者共————」
「レオン、マレウス、ゾーネンキント、そしてバビロンに申し渡す!」
真名を告げれらた夜都賀波岐は緊急停止。
敗者の型に嵌められたために、その存在は急速に力を失う。
流れるBGM“我魂為新世界”も相まって、展開が神懸かっている。
そして竜胆の中で響き渡るは黄金の声——愛するからこそ壊せ——その言葉に迷わず賛同。
天魔たちを麗しいと思うからこそ、憎悪の泥など払わねばと願い。
竜「その存在は世界に容認されていない!受けよこの一矢 天魔覆滅!」
黄金の光を纏った竜胆の矢は、時の鎧が剥がれ落ちた夜都賀波岐たちにとって一撃必殺のものに。
無防備を晒した常世を、庇うように紅葉が割ってはいる——。
海上では奴奈比売に喰らいつく爾子・丁禮。
真名を呼ばれたところでの一撃のため、ここで決着がついてもおかしくないのだが......。
奴「終われない。止まれないのよ、この程度で。こんなもので」
「大切だって、言ってくれたの!全部忘れていたわたしさえ、彼は光(せつな)と呼んでくれたのよッ」
「————止めてあげるわ、シュライバー」
「今度はわたしが、あんたに触れて、壊してあげる!」
永遠となった地星は終わらない。
第四天下とは違い、愛する者を守るために、己が祈りを展開。
“ものみな眠るさ夜なかに”
“水底を離るることぞ嬉しけれ
“水のおもてを頭もて 波立て遊ぶぞ楽しけれ”
“澄める大気をふるわせて 互に高く呼びかわし”
“緑なす濡れ髪うちふるい”
“乾かし遊ぶぞ楽しけれ”
“——太・極——”
“随神相——神咒神威・無間黒縄”
Csejte Ungarn Nachtzehrer
痛みを堪え、なんとも苦しそうに発動。
Dies組の熱演が凄まじい......!
前作で猛威をふるった“食人影”の太極ver。
その強化っぷりはものすごく、なんと海域全体を覆いつくすほどのMAP兵器に。
物理的に停滞を強いるのに加え、精神面でも対象を捕縛する鬼畜性能。
早々に出していれば、東征軍を壊滅できていたであろう......。
しかし竜胆の天魔覆滅&丁禮たちの一撃により、無間黒縄の威力は大きくダウン。決殺とはならず、覇吐らはギリギリのところで持ちこたえる。
愛する夜刀のために瀕死ながらも渇望を爆発させる奴奈比売。
鮮烈ながらも......その想いの本質は“足を引く”というもの。
咲耶はそんな奴奈比売の考え方を否定。
同族嫌悪であることを十分に悟り、だからこそ泥の沼も薔薇の園も、想い人のためにはならないと叫ぶ。
その声に丁禮たちも共感。
咲耶に自らの母を重ね、変わってくれることを願う——。
シ「共に逝こうか、アンナ。これも腐れ縁だろう」
影に首を切られながらも、最期の力で見事奴奈比売の随神相を喰い破る。
因縁を清算し、主の勝利を祈って散る爾子・丁禮。
大事な者たちの役に立てないことが歯がゆく、誰かの糧になれないことが許せない。
その危うい価値観を、散る寸前の奴奈比売が非難。
前世から続く薔薇の業、変われるかどうか試すように嗤いながら、彼女も逝く。
ル「ごめんなさい、ロートス......負けちゃった」
「だけど、あなたの勝利を、信じているわ」
「わたしが守り通した、つまらない意地を——」
「永遠にしてくれて、ありがとう」
“自分のもとまで来てほしくて”
“けれど、そんなことで愛した刹那を穢したくなくて”
“少し遅れてしまったけれど、おめでとう。あなたの女神は、あなたに似合う、とても素敵な女の子だったわ”
ルサルカが真ヒロインのグランドエンド追加はよ。
一方、常世を庇った紅葉。当然無事ですむはずもなく.....。
......おいおい先輩はまた親を喪うことになるのかよ......勘弁してやってくれよ......。
それでも、紅葉の顔に後悔の色はない。
命懸けで守ることができた娘へ、撤退の指示を。
リ「私と彼、どっちが大事?」
.......んだよ、その質問。反則どころの騒ぎじゃねえぞ。
ルート上、都合二度目の母との別離。
常世の心中を察するばかり。
そんな死にゆく紅葉の表情は晴れやか。
腐れ縁との“女の喧嘩”.....もとい“母親の喧嘩”ができたことに満足そうに逝く。
空中での夜行vs母禮も終息。
天魔覆滅の効果はこちらにも。拮抗していた勝負が完全に傾いたため、夜行のやる気も明らかにダウン。母禮へ撤退を促す。
これだけでもかなり屈辱的だろうに「所詮は女か」の余計な一言。
こいつあらゆる方面にケンカ売ってやがんな...。
夜行は次なる“蝉”を大嶽と定め、一人ニヤリ。
撤退を開始する常世と母禮。
敗北したうえに母を失って常世のメンタルはさすがにボロボロ(´;ω;`)。
そんな彼女を励ます母禮の言葉に、紫織が急に激怒。
「女が~~」的なワードは紫織にとって地雷。
......ただこのシーンはやっぱり唐突すぎて、ちょっと面くらう。次の決戦のために紫織と母禮に因縁つくらせたいのは分かるけど、強引すぎな気も。紫織が急にキレるもんだから、ただのヒス女みたいに見えちゃう。
そして————総てを出し切った龍明も舞台から退場に。
しかし何と澄み切った笑顔だろうか......!
龍「私は、私のやるべき意地を完遂した。だから......そろそろ眠らせろ」
水「——嫌です!私の声で眠らないというのなら、龍水は喉が張り裂けようと母刀自殿をお呼びします!」
「ああああ、あぁ。嫌です、行かないでくださいっ。どうか、どうか生きてください————!」
このセリフ、一体何度聴きなおしたことか。
個人的にこのシーンは神咒ベストアクトです。それほどまでに小林桂子さんの演技の熱量がハンパじゃなく、涙腺が崩壊どころかビックバン。
龍明は自らの正体を明かそうとするも、今さらそんなのは野暮というもの。
覇吐たちにとって御門龍明は御門龍明以外の何者でもない。ここまで引っ張ってくれた偉大な先人。
“他者との別れ”......天狗道に生まれた彼らが、しかし胸に悲痛な想いを抱く。
その光景に、龍明は満足。
最期に、それぞれへ進むべき道を助言。
一人ひとりに語りかけ、益荒男だけでなくユーザーの胸にもグッと響かせてくれる。
龍「ああ......これでようやく眠れる」
「死は無に非ず。おまえたちが創る新世界で———」
「————きっといつかまた会おう」
長い長い旅路を終えて、勝利を託して英雄は逝く。
残された者たちは、龍明、爾子、丁禮の魂を抱いて、ついに蝦夷へ。
その蝦夷では、宿儺もまた仲間たちの死を悼む。
リザ、ルサルカの死は無駄ではないと確信し、次いで想いの矛先は龍明へ。
本来自分がするべきだった、「次代の発見、成長」という重大な役割を代わりに果たしてくれたことを心から感謝。
飄々とした彼には珍しく沈痛で、だからこそ終わりの日を強く見据える。
人物雑感
奴奈比売
最期の独白は反則だろうがよ。
おまえはもっと小狡くて、嫌らしくて 、小物の代表みたいな奴だったじゃないか。
思い出したかのように純情属性を出してくるんじゃねえよ大好きだ!!!
ルサルカにとっては、ロートスが至高と掲げていた“不変”そのものになれたため、穢土はさぞ極楽だったろう。
マッチ相手が度をこえたヤンデレ女だったのが運のツキやね。
紅葉
夜都賀波岐の保護者枠。
立場的には腐れ縁とほぼほぼ同じだったが、“玲愛の母親”という最大の違いにより穢土に残った。
大局的にみれば「龍明といっしょに西に渡れよ」って話だが、そんなことできるわけねえよな......。世界より娘を選んだ彼女を責めることができるのは、それこそ腐れ縁だけだろ。
エレオノーレとの喧嘩、おおいに楽しませていただきました。
爾子・丁禮
きれいになったシュライバー。
前世では黄金一筋だったが、今作では記憶が戻った後も夜行に付き従い、忠犬属性なのはDNAレベルで刻まれてるっぽい
龍明に比べて活躍の機会が少なかったのが残念だが、それでもDies時代から救済されて何より。
御門龍明
みんなの姐さん。
神咒で人気投票すれば1、2位を争うこと間違いない人。
この物語のキーパーソンどころか、いなきゃ詰んでた。本当にありがとう。
栄えある黄金の爪牙に敬礼(`・ω・´)ゞ ジークハイル・ヴィクトーリア!!
敵も味方も退場バーゲンセール状態だった今章。
まぁ大抵の人はDiesプレイ済だろうから、多くのユーザーはここで涙を枯らしただろう。
黄昏たちをこうも苦しめる元凶、“波旬”へのヘイトが募る中、次章はついに東征最終決戦。
枯れた涙を再構築する暇がないぜ......。
極月・無間蝦夷→「神咒神威神楽 曙之光」霜月・無間蝦夷 感想・一 - ゆらりゆらりとゆらゆらと